自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆潮目は変わったのか

2018年03月09日 | ⇒メディア時評

       アメリカのトランプ大統領の8日付の公式ツイッター=写真=そのものがリアルな国際政治だ。「金総書記は韓国代表に凍結だけでなく、非核化についても話した。また、この期間中の北朝鮮によるミサイル発射もない。大きな進展が見られるが、合意に至るまで制裁は続く。会議が計画中だ!」

   「凍結」は核開発の凍結、「合意」とは非核化の正式な合意、「最大限の圧力」とは国連の経済制裁による最大限の圧力のことだろう。このツイッターを素直に読めば、トランプ大統領は「オレは戦わずして勝った!」と誇示しているように思える。

   9日付の韓国「朝鮮日報」の電子版は、韓国の特使が8日、アメリカのトランプ大統領に北朝鮮の金正恩労働党委員長からの親書を手渡し、「金委員長は非核化の意思を持っている」と伝え、これに対し、トランプは5月までに金委員長と会う意向があると述べた、と伝えている。トランプ氏あての親書には、1)北朝鮮の非核化意思に関する内容、2)核とミサイル実験を中止するという内容、3)トランプ大統領と早期に会談を希望するという内容などが書かれているという。トランプのツイッターの文と、朝鮮日報の記事は一致するので、双方の内容には信憑性を感じる。

    また、朝鮮日報の記事で「米韓の軍事演習が継続される必要があることを理解している」とあることに疑問符がついた。軍事演習に関しては、最近まで北朝鮮の朝鮮中央通信は「南北関係改善の流れを必死に遮ろうとしている」(2月2日)とアメリカを非難していたではないか。

   国際政治の潮目が変われば、さまざまに逆転現象が起きる。南北首脳会談の合意(6日)を受けて北朝鮮リスクが後退したことから、機雷など生産する防衛関連株で知られる石川製作所(本社・石川県白山市)の7日の株価はストップ安(マイナス500円)となった。きょう9日も261円安、11%下げの2130円で引けた。北朝鮮に絡む懸念が後退するとともに、売りが膨らんでいる。昨年10月16日に4205円(終値)をつけていたのでほぼ50%の下落となった。

   この防衛関連株の様子を見れば、いわゆる「地政学的リスク」が弱まったということだろうか。一方で、毎日のように日本海側の海岸線に北朝鮮の木造漁船が漂着とのニュースが伝えられている。6日に石川県輪島市に漂着した船は全長4.5㍍、幅2.2㍍の小船だ。乗組員や遺留品は見つかっていない。こんな小船を冬の日本海の荒波に駆り出す北の政治体制はいったいどうなっているのか。北朝鮮沿岸の日本海漁場での操業権を中国漁船に売り、結果として北朝鮮の漁船は沿岸から遠く離れた漁場に駆り出されているとも伝えられている。

   平昌冬季オリンピックの南北合同参加をきっかけとした潮目の変わりで果たしてどれだけ北の危機を緩和できるのだろうか。現実に朝鮮半島の危機はより深まっているのではないか。木造漁船の漂着は「大量の難民船」の予兆ではないかの。日本海を眺めているとそんなことを考える。

⇒9日(金)午後・金沢の天気  あめ

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