自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「平成最悪」の豪雨

2018年07月10日 | ⇒ニュース走査

    「死者126人 平成最悪」と新聞の見出しは白抜きベタで伝えている。西日本豪雨での大雨特別警戒は全て解除されたものの、その後の被害は日々拡大している。昨日付の紙面では104人だった死者がきょう付で126人だ。安否不明者は86人もいる。先週5日に気象庁が「記録的な大雨になる恐れがある」と呼びかけたが、「平成最悪」になるとは想像すらできなかった。

    堤防が決壊した岡山県倉敷市真備町の空から映像をテレビで見たが、まさに泥海に水没した街だった。屋根の上から、登った樹木から助けを求める人、実に痛々しかった。4階建ての病院から入院患者や避難住民がボートやヘリコプターを使って救助が続けられているのを見て、ビルなどの建築物の必要性を改めて感じた。

    地場産業への打撃も深刻だ。岡山県総社市でアルミニウム工場への浸水で溶解炉が爆発した。山口県岩国市で有名な日本酒「獺祭(だっさい)」の蔵元のホームページによると、「豪雨により岩国にある本社・酒蔵に浸水と停電による被害を受けました。」「 本社隣接の直営店 獺祭ストア本社蔵はしばらくの間営業中止とさせて頂きます」とあった。一升瓶(1.9㍑)換算で90万本分の製造に影響が出て、ストアの被害など設備を含めた被害総額は15億円になり、製造再開には2ヵ月半ほどかかるという。このほか、農林水産業など一次産業を始め、加工、流通の2次、3次産業にも多大な被害を与えていることは想像に難くない。

    高速道路の山陽道の福山西IC―広島ICの通行止めや、JR貨物の山陽線の兵庫―山口間と、予讃線の香川―愛媛間でJR貨物が運休している。復旧が遅れることになるればそれだけ、東日本から九州への物流にも影響が出るだろう。

     先月6月7日に土木学会が発表した数字を思い起こす。今後30年以内に70-80%の確率で発生するとされる「南海トラフ地震」がM9クラスの巨大地震と想定すると、経済被害額は最悪の場合、20年間で1410兆円(推計)に達すると。倒壊などによる直接被害は169兆5千億円、それに加え、交通インフラが寸断されて工場などが長期間止まり、国民所得が減少する20年間の損害額1240兆円を盛り込んだ数字だ。

     1410兆円という数字を目にした時は数字が「躍っている」との印象だったが、政府が発表した「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」(2014年3月28日)に目を通してみる。M9クラスの巨大地震を想定した場合の「減災目標」を「想定される死者数を約33万2千人から今後10年間で概ね3割減少させること、また、物的被害の軽減に関し、想定される建築物の全壊棟数を約250万棟から今後10年間で概ね5割減少させる」と掲げている。いま、南海トラフ巨大地震が起きれば最悪30万人余りの命が失われるのだ。暗い話になってしまった。

⇒10日(火)午前・金沢の天気   はれ

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