それにしても「なぜ」だ。週明けの9日の東京株式市場、日経平均株価は2万4839円、前日比で514円高く、29年ぶりの高値だとか。29年前は日本のバブル景気の末期。アメリカ大統領選で民主党のバイデン氏が事実上の勝利宣言を出し、選挙後を見据えた投資だろうか。
一方で、欧米では新型コロナウイルスの感染が再拡大している。 世界での感染者は累計5040万人、国別でもっとも多いのはアメリカの997万人だ。亡くなった人も世界で累計125万人、うちアメリカは23万人だ(11月9日付・ジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード)。これが経済に及ぼす影響は計り知れないだろう。世界的にコロナの第2波、第3波が来ているという印象だ。人類はコロナ禍に打ち勝つことができるのだろうか。と、やや悲観的に考えていたところに来て、この株高だ。おそらく、世界中で巨額の金融緩和や財政出動が行われ、来年になればワクチン開発によってコロナ禍も収束に向かうという読みなのだろうか。
ミクロの合理性の追求がマクロの非合理性をうみだしてしまうという「合理性のパラドックス」を学生時代に学んだ。株価が上がると予想されると、大量の買いが入り株価が高騰する。バブルである。逆に株価が下がると予想されると、売り浴びせが起こり、急落してパニックが起こる。バブルもパニックもマクロ的にはまったく非合理的な動きではあるが、株価の上昇が予想されるときに買い、下落が予想されるときに売る投機家のミクロ的行動には合理的だ。株式市場だけでなく、投票行動などでも起こるパラドックス現象だ。
コロナ禍が世界にもたらしている景気後退の影響はシビアだ。8月17日に内閣府が発表した四半期(4-6月) のGDP速報値は、前期比マイナス7.8%で年率換算はマイナス27.8%、3期連続のマイナス成長だった。 アメリカも年率換算でマイナス32.9%だった。リーマンショック後の2009年の1-3月のGDPはマイナス17.8%だったので、それを大幅に超えたことになる。
実体経済がともなっていないのに株価だけが上がるこの現象は「合理性のパラドックス」化をさらに鮮明にするのではないだろうか。内閣府が次に発表する四半期(7-9月)のGDP速報値は今月16日午前8時50分だ。
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