きのう野外の駐車場に停めておいた自家用車のフロントガラスが一夜で白くなった。きょう日中も金沢を囲む山々がかすんで見えた=写真=。黄砂だ。ソメイヨシノは満開なのだが、空がこのようにかすんでいては見栄えがしない。
日本から4000㌔も離れた中国大陸のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠から偏西風に乗って黄砂はやってくる。最近では、黄砂の飛散と同時にPM2.5(微小粒子状物質)の日本での濃度が高くなったりと環境問題としてもクローズアップされている。外出してしばらくすると目がかゆくなってきた。黄砂そのものはアレルギー物質になりにくいとされているが、黄砂に付着した微生物や大気汚染物質がアレルギーの原因となり、鼻炎など引き起こすようだ。さらに、黄砂の粒子が鼻や口から体の奥の方まで入り、気管支喘息を起こす人もいる。
黄砂は「厄介者」とのイメージがあるが、意外な側面もある。黄砂といっしょにやってくる微生物を「黄砂バイオエアロゾル」と呼ぶ。金沢大学のある研究者は、食品発酵に関連する微生物が多いこと気づき、大気中で採取したバチルス菌で実際に納豆を商品化した。その納豆の試食会に参加したことがある。日本の納豆文化はひょっとして黄砂が運んできたのではないかとのその研究者の解説に妙に納得したものだ。
生態系の中ではたとえば、魚のエサを増やす役割もある。黄砂にはミネラル成分が含まれ、それが海に落ちて植物性プランクトンの発生を促し、それを動物性プランクトンが食べ、さらに魚が食べるという食物連鎖があるとの研究もある。地球規模から見れば、「小さな生け簀(す)」のような日本海になぜブリやサバ、フグ、イカ、カニなど魚介類が豊富に獲れるのか、黄砂のおかげかもしれない。
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