自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ミサイルゲームはいつまで続く

2021年03月25日 | ⇒ニュース走査

   弾道ミサイルを1発打ち上げると、そのコストはいくらなのだろうか。共同通信Web版(3月25日付)によると、北朝鮮はきょう25日、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射したと日本政府が発表した。北朝鮮東部の宣徳付近から午前7時4分と同23分に発射し、いずれも約450㌔飛行。日本領域には到達せず、日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は昨年3月29日以来で、1月のアメリカのバイデン政権発足後で初めて。

   この弾道ミサイル発射の意図は何なのか。以下憶測である。北朝鮮の金正恩総書記が一番恐れていることはアメリカによるピンポイント攻撃、いわゆる「斬首作戦」だろう。実際、アメリカは2011年5月2日のバキスタン攻撃でオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦を実行した。命令を下したのはオバマ氏、民主党政権下で実施された、

   この斬首作戦を避けるため、金氏はまず弾道ミサイルを打ち上げ、アメリカとの対話の機会を狙う。以下事例だ。2017年7月28日、北朝鮮が打ち上げた大陸間弾道ミサイル(ICBM)はアメリカ西海岸のロサンゼルスなどが射程に入るものだった。北は同年9月3日に6回目の核実験を実施し、同15日には弾道ミサイルを日本上空に飛ばした。それをトランプ大統領が国連総会の演説(同19日)で「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説した。その後、金氏はトランプ氏との米朝首脳会談を2018年6月12日(シンガポール)、2019年2月28日(ハノイ)、同年6月30日(板門店)で3回行った。首脳会談を実施している間はアメリカによる斬首作戦はないと踏んでいるのだろう。

   この経験則をベースに、今度はバイデン氏との対話を求めて挑発を行っているのではないか。金氏が1月5-7日に開催した党大会で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いるICBMと原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   そして、きょう弾道ミサイルを打ち上げを実行した。ただ、2017年7月28日のICBMに比べると地味なイメージだ。おそらくコストの問題だろうか。国連安保理が履行を求める国際社会による経済制裁、それに昨年の台風と洪水など自然災害の食糧危機、そして新型コロナウイルス対策などが重なって経済情勢がかなりひっ迫していることは想像に難くない。それにしても、金氏はいつまでこのミサイルゲームを続けるのか。

(※写真は朝鮮中央通信HPに掲載されている2017年3月6日の弾道ミサイルの発射の模様。「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射、このうち1発が能登半島沖200㌔に着弾した)

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