自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★能登半島地震 「板子一枚、下は隆起」漁船は出漁できず

2024年02月07日 | ⇒ドキュメント回廊

   「板子一枚、下は地獄」。能登の漁師たちがよく口にする言葉だ。漁は危険を伴う職業だ。自然への恐れや畏怖の念を抱きながら、海からの恵みを得ようと生業を続けている。今回の地震で港はどうなったのか、輪島漁港に行った(今月5日)。同港は年間漁獲量(2022年実績)6000㌧の水揚げがあり、停泊する漁船も200隻余りと石川県最大の港だ。

   行ってみると港には刺し網漁船や底引き網漁船などが肩を寄せ合うように停泊していた=写真・上=。冬場はタラやブリ、ズワイガニなどの水揚げでにぎわうのだが、静まり返っている。漁港の様子を見にきていた近くの輪島前町の漁師がいたので聞くと、海底が隆起して水深が足りないので船が出せないのだという。実際、港内で漁船2隻が座礁していた。   

   県農林水産部による被害状況のまとめ(2月5日現在)によると、県内69漁港のうち60漁港で岸壁や防波堤などに損傷が確認された。漁船は233隻が転覆、沈没、座礁、損壊、流失している。そして、地盤の隆起は半島北側のいわゆる外浦(そとうら)側の志賀、輪島、珠洲の3市町22漁港で顕著で、水深の不足や海底の露出で多くの漁船が出せない状態となっている。

   県農林水産部などの調査によると、漁港の海底の隆起は1㍍から1.5㍍ほど。もともと日本海側は満潮干潮の潮位の変動は少なく、1年を通じても50㌢から60㌢ほど。なので、日本海側の漁港では干潮を見込んでの深めの水深を設定しておらず、3㍍から4㍍のところが多い。そこに1㍍から1.5㍍ほどの海底の隆起となると船底がつかえる漁船が出てしまう。

   輪島漁港から西よりの同市門前町の漁港に行く。小さな漁港の海底や防波堤が隆起して、陸と化していた=写真・下=。向こうに見える海面から目測して2㍍余りの隆起ではないだろうか。こうした能登の漁港の光景を見ると、むなしくなる。一方で、半島の富山湾に面したいわゆる内浦(うちうら)側の漁港は海底の隆起は免れていて、ブリやタラなどの漁獲を再開している。なんとか能登の漁業を繋いでほしい。

⇒7日(水)夜・金沢の天気     くもり

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