自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「1次避難所の滞留者は所得が低い」 知事発言また独り歩きを始める

2024年07月29日 | ⇒ドキュメント回廊

  元日の能登半島地震から7ヵ月が過ぎようとしているが、避難している人々は1590人いる。被災地の地元の公民館や体育館など市町の54ヵ所(1次避難所)で721人、県が指定した金沢市などのホテルなどの宿泊施設103ヵ所(2次避難所)で805人、そのほかで65人となっている(7月23日時点、石川県危機対策課まとめ)。

  きょう29日付の読売新聞オンラインによると、石川県の馳知事は25日、東京都で開かれた、能登半島地震で対応した関係府省庁の職員らを集めた会合で、「自宅にも戻れない、障害のある方など、所得の低い方が1次避難所で滞留している。この方々をいかに支えていくかも私どもの使命だ」とあいさつした。また、閉会後、記者団に対し、「家で自分で本来生活していかなければならないが、避難所の方が食事、掃除、見守りもあるので安心していられる。こういった方がけっこうな数、滞留している」と説明した。2次避難所についても「ホテルにいた方が楽。『実はもう自宅に戻れますよね』と言ってもなかなか戻れない人もいる」と語った。

  知事として避難所で生活をしている人々のことを、「所得が低い」や「ホテルにいた方が楽」などと語る必要性があったのだろうか。能登半島地震で対応した関係府省庁の職員らを集めた会合だったので、身内のような気持でリップサービスをしたのかもしれないが、これは政治家としては舌禍だ。

  馳知事は今月3日の記者会見で、連休を利用して8月11日の「山の日」に合わせて白山に登ると表明していた。ところが一転、8日の県庁の会議で、9月補正予算案に向けて被災した自治体への視察や聞き取りなどのスケジュールを改めて確認したところ白山登山の日程を組むことが厳しくなったとして、登山の取りやめを明らかにした(7月9日付・メディア各社の報道)。知事として、被災地よりなぜ登山なのかと批判が高まっていた。

  金沢で「能登へ行かないことが支援」と思っている人が多くいる。そのきっかけは、馳知事が1月10日の記者会見で「個人的なボランティアは2次被害に直結するので控えてほしい」と訴えたことだった。馳知事は被災地へ向かう道路事情が悪く、個人的なボランティアで自家用車で現地に行くと渋滞に巻き込まれ、救急車や消防車の往来にも支障をきたすのでしばらく控えてほしいという意味で述べたのだが、いつの間にか「ボランティアは自粛」「行かないことが支援」の言葉が独り歩きを始めた。

  今回の避難所生活者への「所得が低い」や「ホテルにいた方が楽」もまた、言葉が独り歩きを始めるかもかもしれない。

⇒29日(月)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

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