月曜日(今月20日)夜の番組を視聴していて、じつに面白かった。有名な神社仏閣をテーマに、出演者に「法隆寺の五重塔は何階建か」や「奈良の大仏の右手の意味は」などと問題が出される。中でも、初めて知ったのが石清水八幡宮には発明家エジソンの記念碑があり、遺徳をしのんで誕生日(2月11日)と命日(10月18日)には慰霊祭が営まれているという。エジソンが白熱電球を開発する際に使ったのが、竹の名産地で知られた京都・八幡の「八幡竹」だったことが縁という。番組を楽しませてもらったが、気になったのはゴールデンタイムにも関わらず、CM枠に公共広告「ACジャパン」が目立っていたことだ=写真=。番組はフジテレビの『呼び出し先生タナカ 2時間SP』だった。スポンサー企業によるCM取り下げの動きが加速しているようだ。
メディア各社の報道によると、同社へのCM差し止めはこれまで70社に上るという。この事態に陥った背景はいくつかあるようだが、転機となったのは今月17日のフジテレビ社長の記者会見だった。タレントの中居正広氏の女性とのトラブルが週刊文春で報道され、その後フジの編成部長が絡んでいたこと(12月26日号)、最新号(1月23日号)ではフジの女性アナも被害者として証言していると報じられ、社長の会見はこの流れを受けてのものだった。
ところが、記者会見の設定や内容そのものがさらに問題視されることになった。会見はフジが定例で行っている定例記者会見の前倒しとして設定されたものだが、出席の枠を定例会見と同じくNHKと民放テレビ局、全国紙、スポーツ紙に絞った。週刊誌やインターネットメディアなどの参加を認めなかったのだ。さらに、テレビ局でありながらカメラによる動画撮影を許可しなかった。
会見で社長は「多大なご心配、ご迷惑をおかけし、説明ができていなかったことをおわびします」と謝罪し、外部の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げると述べた。ところが、中居氏と女性のトラブルをフジ側が2023年6月に把握していながら、番組を続けていたことなどに質問が集中すると、「回答を控える」を繰り返した。会見で視聴者や国民におわびと言っておきながら、誠実さが見えない、さらに企業統治、ガバナンスの問題はいったいどうなっているのかとむしろ不満が噴出した。
きょう付の新聞メディア各社の報道によると、1975年から続くフジの長寿番組『くいしん坊!万才』は今月26日分の放送をもって休止することが分かった。1社提供のキッコーマンが放送を当面見合わせるよう要請したようだ。スポンサー企業は番組の現場レベルでの問題ではなく、フジテレビ全体の問題だと捉えるようになったのだろう。
これは一時的な問題なのだろうか、さらに、スポンサーのテレビCM離れはフジテレビだけにとどまるのだろうか。広告最大手の電通のまとめによると、2023年の総広告費は通年で7兆3167億円(前年比103.0%)となり、1947年の調査開始以降、前年に続き過去最高を更新した。中でもインターネット広告費は3兆3330億円(前年比107.8%)と過去最高を更新した。一方、テレビメディア広告費(地上波テレビと衛星メディア関連)は1兆7347億円(前年比96.3%)と落ち込んだ。前年2022年の北京冬季オリンピック・パラリンピックやFIFAワールドカップ2などの反動減と言えなくもないが、ネットに広告シェアを奪われているのは事実。スポンサー企業のテレビ離れがこのまま加速するのかもしれない。テレビ業界全体の問題としてスポンサーのCM離れとどう向き合うのか。
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