前回ブログの続き。安倍元総理の国葬がきょう閣議決定して、9月27日に日本武道館(東京・千代田区)で執り行われることになった。通算8年8ヵ月の総理在任中はとくに外交分野で存在感を示してきた安倍氏だけに、すでに世界各国から弔問希望の問い合わせが外務省に寄せられているのではないだろうか。
見方を変えれば、岸田総理にとっては外交力を強化するチャンスとも言える。岸田氏はすでに積極的な外交を展開している。先月下旬にドイツで開催されたG7サミットに出席した後、スペインでのNATO首脳会議に日本の総理として初めて出席した。さらに、岸田氏はアメリカのバイデン大統領との共同記者会見で、来年のG7サミットをアメリカの原爆投下地である広島市で開催すると発表した。その「広島G7サミット」は5月19-21日の開催が正式に決まった。
岸田氏が初めてNATO首脳会議に参加した大義は、自由主義圏という共有概念のもとで、アメリカやヨーロッパ諸国と軍事的にも連携を強めたいということだろう。ロシアによる偽旗を掲げてのウクライナ侵攻、さらに中国による強引な南シナ海の実効支配と尖閣諸島への領海侵犯を重ねて念頭に置いている。岸田氏は、国葬を外交の舞台として繰り広げることで、安倍氏の遺志を引き継ぐことになると「弔問外交」に意義を見出しているに違いない。
では、このケースはどうかとふと考えてしまうのは、国葬にプーチン大統領が参列したいと申し込んできた場合、政府はどう対応するのだろうか。報道によると、プーチン氏は今月8日、安倍氏の母、洋子さんと妻の昭恵さん宛てに、「息子であり、夫である安倍晋三氏のご逝去にお悔やみを申し上げます」と弔電を送り、「この素晴らしい人物の記憶は、彼を知るすべての人の心に永遠に残る」と述べた(8日付・朝日新聞Web版)。
ロシアのウクライナ侵攻後、日本政府はプーチン氏や親戚、ロシアの富裕層ら507人の資産を凍結。在日ロシア大使館の外交官ら8人を国外追放した。これに対して、ロシア側も、同国に駐在する日本外交官8人を国外退去させ、日本の国会議員384人に入国禁止措置を取った。まさに、日本とロシアは絶縁状態となっている。
この状況の中で、プーチン氏が「彼を知るすべての人の心に永遠に残る」と参列を希望した場合、日本政府は受け入れるのだろうか。もし受ければ、国際世論は相当ぎくしゃくするに違いない。香港問題やウイグル族への強制労働など中国の人権状況に対する批判から北京オリンピックには主要国の政府関係者が出席しない「外交的ボイコット」が繰り広げられたが、国葬にプーチン氏出席となると、それどころではないだろう。
逆に受け入れて、ウクライナ侵攻の決着を導き出すという「サプライズ外交」を密かに描いているかもしれない。今後、国葬をめぐる論議はこの点にフォーカスしていくだろう。プーチン氏は顔を出すのか、出さないのか。
(※写真は、2016年12月16日、日露首脳会談後に行われた安倍総理とプーチン大統領による共同記者会見。このとき、安倍氏は「95分間、
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