自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「2018」を読む-下

2018年01月03日 | ⇒トレンド探査
   「ことしも自虐ネタできたか」、くすくすと笑いながら読んでしまった。3日付の新聞朝刊を楽しみというほどではないが、少し意識して開いた。期待を裏切らない全面広告だった。「謹んで新年のお詫びを申し上げます。」を最上段に掲げ、以下「『早慶近』じゃなくなったことに関するお詫び」「2018年問題に関するお詫び」「近大マグロに関するお詫び」「インスタ映え広告に関するお詫び」「ド派手な入学式に関するお詫び」などと「お詫び」記事のオンパレード。最下段で「今年も盛大にやらかすんで、先にお詫びしときます。近畿大学」と結んでいる。きょうは同大学の願書受付の開始日でもある。

     自虐ネタの全面広告、「近大」が問うていること

    近畿大学の新年広告について大学の職場で話題になったのは昨年1月のこと。「これは、自虐ネタですよ」。先輩教授が3日付の全国紙の広告を見て笑った。『早慶近』の特大文字とマグロの頭の写真が掲載された全面カラーの広告だった。読者が普通に読めば、「早稲田、慶応、そして近大」。これまでは「早慶上智」だったが、最近は上智にとって代わって近大が早稲田、慶応と並んだ、と言いたいのだろうと解釈した。ところが最後に下段の右隅で「早慶近」の意味を披露している。「みなさまに早々に慶びが近づきますように」。この広告の練り方は深い、と印象に残ったものだ。

    ところが、今年は昨年のネタをさらにこね回し、「『早慶近』じゃなくなったことに関するお詫び」と題して、「早慶近中東立法明上」をキャッチコピ-にしている。「昨年1月3日に掲載した『早慶近』というキャッチコピーの新聞広告によって、『100年早い』とか言われて世間をお騒がせし、っていうか一部炎上したことをお詫び申し上げます」と言い訳しつつ、しっかりと「早慶近」と先頭グループを強調している。「ちなみにこの並び、語呂よくしてみただけで、深い意味はありません。念のため」とあくまでもランキングではなく語呂合わせと言い訳しているが、意図は見え見えだ。ちなみに、近畿大学のランキングはイギリスの教育専門誌「Times Higher Education」が出してる「THE世界大学ランキング」で1000位に入った私立総合大学のことを指す。

    確かに、近畿大学の経営戦略は突出している。少子化で18歳人口が減少する中、近畿大学は2005年に5万人だった入試の志願者総数を2017年には14万人に伸ばし、早稲田大学や明治大学を抜いて4年連続で全国1位となっている。昨年4月には入学定員を920人も増やしている。また、32年間かけてクロマグロの完全養殖に成功し、「近大マグロ」はすでにブロンド化されて寿司屋でもメニューになっている。水産資源の持続可能な保全という意味では国際的にもっと評価されていい。経営面では脂が乗りに乗っている。

    2030年以降の18歳人口は100万人を切る。私学ランキングの旧式なパラダイムは「早慶上智」「関関同立」だったが、それだけはでもう大学としの経営は存続が難しくなることは目に見えている。自虐ネタの全面広告ながら、近畿大学はそのことを問うているに違いない。耳を澄ませば高笑いが聞こえてくるようだ。「早慶上智のみなさん、関関同立のみなさん、あと10年もすればあんたがたの経営はどうなりますやろか。気つけなはれ。オーッホッホッ」

⇒3日(水)午前・金沢の天気   くもりときどきゆき

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