きょう7日から改正刑法の一部が施行され、公然と人を侮辱した行為に適用される侮辱罪に、「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円以下の罰金」を加えられ、SNS上での誹謗中傷など、悪質な行為への対処がこれまで以上に厳しくなる。
侮辱罪の厳罰化に向けてこれまで法務省は去年4月、匿名の投稿者を迅速に特定できるように改正プロバイダー責任制限法を成立させ、裁判所が被害者からの申し立てを受けて、SNSなどプラットフォーム事業者に投稿者の氏名や住所などの情報開示を命じることができるようにするなど着々と準備を進めていた。
この厳罰化のきっかけとなったのが、フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』(2020年5月19日放送)に出演していた女子プロレスラーがSNSの誹謗中傷を苦に自死した事件(同5月23日)だった。
この事件では、警視庁は侮辱罪の公訴時効(1年)までに、ツイッターで複数回の投稿があったアカウントの中から2人の男を書類送検した。このうち、大阪府の20代の男は女子プロレスラーのツイッターに「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと投稿を繰り返した。東京区検は去年3月、この男を侮辱罪で略式起訴し、東京簡裁は男に科料9000円の略式命令を出した。即日納付され、男はこれ以上罪を問われることはなかった。侮辱罪の罪の軽さが問題視されていた。
SNS上のこうした侮辱は厳罰化すれば治まるのだろうか。煽った側のメディアの責任は問われないのだろうか。放送より先の3月31日にフジテレビは動画配信サービス「Netflix」で番組を流し、SNS上で炎上した。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及んだ。ところが、5月19日の地上波放送では、問題のシーンをカットすることなくそのまま流した。これが、SNS炎上をさらに煽ることになり、4日後に自ら命を絶った。つまり、結果的にSNS上の誹謗中傷を煽ったはテレビ局側ではなかったか。
これはテレビ業界全体に言えることだが、よいにつけ悪いにつけSNS上での反響の大きさが視聴率のアップにつながると勘違いしている節がある。表現の自由や報道の自由に水を差すつもりは一切ない。侮辱罪が厳罰化したことの意味を捉えて、テレビ業界は番組によるSNS上での誹謗中傷を相互にチェックする、あるいは情報を共有する組織・システムを構築する必要があるだろう。
(※写真は2020年5月23日付のイギリスBBCニュースWeb版で掲載された女子プロレスラーの死をめぐる記事)
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