自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★北アルプス国際芸術祭 信濃の大地と自然が生み出す神秘なアート

2024年10月24日 | ⇒トピック往来

   長野県大町市で開催されている「北アルプス国際芸術祭2024」に来ている。アートディレクターの北川フラム氏が総合ディレクターを務める。国際芸術祭は去年秋に「奥能登国際芸術祭」を鑑賞して以来。北アルプスの雪の山々をイメージしてきたが、曇り空だったこともあり、あの雪の連なりの風景はまだ見れていない。水や風、植物など信州の自然を題材にした作品を楽しみにツアーバスに乗り込んだ。印象に残った作品をいくつか。

  北アルプスの雪解け水と湧き水に恵まれる大町は湖が多い。その一つ、木崎湖畔にたたずむ仁科神社の鎮守の森に、無数のプラスティックレンズが吊り下がる空間がある。その数は2万個にも及ぶ。カナダを拠点とするアーティスト、ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレットによる作品『ささやきは嵐の目のなかに』=写真・上=。まるで、森の中に大粒の雨が注いでいるように感じる。レンズから森を眺めると、まったく別の森の風景が広がる。

  まるで空と大地が一体化する神秘な風景のようだ。北アルプスを仰ぎ見る田園に囲まれた鎮守の森の中に鎮座している須沼神明社の神楽殿。絹に木版で描いた羽衣のような布が風にたなびく様子は天空に流れる「雲海」を感じさせる。宮山香里氏の作品『空の根っこ -Le Radici Del Cielo-』=写真・中=。羽衣のような布は、空に流れる雲のようでもあり、大地に根差した根っこのようでもある。神楽殿は神々の来臨や神託を願う歌や舞いの儀式が営まれる、聖と俗、常世と現世の「神と人との接点」のステージだ。「隔たり」ではなく「つながり」の世界を感じさせる。 

  大町には豊かな里山が広がる。かつて麻の産地として栄えた美麻地区にある1698年築の茅葺き屋根の民家「旧中村家住宅」は国の重要文化財でもある。麻を使ったカーテンをくぐった先にあるう厩(うまや)では、かつて麻畑だった場所で採取した植物を焼成しガラスのなかに閉じ込めた、芸術的なタイムカプセルのような作品が広がる。佐々木類氏の作品『記憶の眠り』=写真・下=。佐々木氏は身近な自然や気候に思いを寄せ、保存や記録が可能なガラスを使った作品を制作している。この地区の暮らしをかつて支えていた麻栽培はいまは行われてはいない。大町の記憶がガラスの中で眠っている。

  公式ガイドブックの中で、北川フラム氏は「土地と自然という私たちのベースになる基本の調査を現場で具現化するというアートの根本に、世界ではじめて取り組んだ作家の恐るべき想像力と先見性を、ぜひ見てください」と述べている。

⇒24日(木)夜・長野県大町市の天気 くもり


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