自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★改正少年法による「実名報道」で何が起きるのか

2022年03月22日 | ⇒メディア時評

   改正少年法をめぐるメディアの「実名報道」について考えてみる。4月から民法が改正され、成人年齢が18歳以上となる。これに合わせて少年法も改正され、18歳、19歳については「特定少年」として扱われる。もともと少年法は立ち直りを重視し、犯罪を犯した場合は警察や検察の捜査を受けた後に家庭裁判所に送られ、非公開の審判で裁判官が本人の立ち直りにふさわしい処分を判断している。

   これについて改正少年法では、刑事裁判の対象となる犯罪をこれまでの殺人や傷害致死など故意に人を死亡させた罪に加え、新たに強盗や強制性交、放火、組織的詐欺など法定刑の下限が1年以上の罪が対象になり拡大する。家裁の審判で刑事処分が相当と判断され、事件が検察官に戻される「逆送」で起訴されれば成人と同様に公開された法廷で裁判を受けることになる。

   と同時に、新聞やテレビ報道の法律上のルールも変わる。現行の少年法では立ち直りの妨げにならないよう、本人を特定する実名報道や写真掲載などは禁止されている(第61条)。今回の改正によって、「特定少年」が逆送され起訴となった場合には、その段階で実名報道の禁止が解除される。

   だからと言って、新聞・TVなどのメディアは機械的に受けて入れて実名報道をするだろうか。判断はケースバイケースで分かれるのではないだろうか。冒頭で述べたように、社会において責任ある主体として民法上で18歳以上を成人とする。それにともなって少年法が改正される。法が厳しくなることで少年犯罪のブレーキになるとの期待も一部にはあるが、改正少年法を理解する18、19歳はほとんどいないだろう。今後も未成熟さゆえに深く考えずに犯罪に関わるケースが多々あるだろう。

   日本新聞協会は「18、19歳の被告名は各社判断で報道 少年法第61条の扱いの方針改定」との見出しで、「4月1日の改正少年法の施行に伴い、18、19歳について起訴後に氏名や顔写真が報道できるようになることから、実名報道は『各社の判断で行う』との説明を加えました。少年保護を重視する法の趣旨を踏まえ、一部の場合を除き実名報道はすべきでないとの基本的な考え方は維持しました」と述べている(2月16日付・「日本新聞協会」公式ホームページ)。   


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