さきほどウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン演説をNHKの中継で視聴した。ずいぶんと手慣れたシナリオライターが周囲にいると直感した。ゼレンスキー氏はこれまでアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアなどの議会でもオンライン演説をしているが、それぞれの国の歴史や文化に応じて、その国の国民や議員の心をつかむフレーズを演説に織り込んでいる。
アメリカ連邦議会(今月16日)でのオンランスピーチでは、1941年のパールハーバー(真珠湾攻撃)や2001年の同時テロを思い出せと言い、公民権運動のキング牧師の言葉で知られる「I have a dream」を想起させるかのように、「I have a need」と述べて、ロシアへの制裁強化を強く訴えた。厳しいことも言っている。ドイツ連邦議会のビデオ演説(同17日)では、支援に感謝を示しながらも「ウクライナのNATO加盟の要望をはぐらかし、ウクライナとEUの間に『新たな壁』をつくることに加担してきた」と苦言を呈した(17日付・時事通信Web版)。
午後6時からのスピーチに耳を傾ける。12分間ほどの演説だった。印象に残ったフレーズをいくつか。「ウクライナと日本は飛行機で15時間かかるが、お互いの自由を感じる気持ちに差はない。生きる意欲に差はない。日本がすぐに援助の手を差し伸べてくれたことに感謝している」「日本はアジアで初めてロシアに圧力をかけた」とロシアに対する制裁の継続を求めた。
そして惨状を訴えた。「ウクライナではすでに数千人が犠牲になり、そのうち121人は子どもだ」「殺された人をきちんと葬ることさえできない。家の庭や道路、可能なところで埋葬している」と現地の状況を語った。
さらに、ロシアがウクライナのチェルノブイリなどの原発を攻撃したことに触れ=写真=、「ロシアは核物質の処理場を戦場に変えた。戦争のあとにこの処理にどれほどの時間がかかるか想像してみてほしい」と訴えた。このとき、ひょっとして世界で唯一の被爆国である日本の「ヒロシマ」「ナガサキ」のことに触れるのかと脳裏をよぎったが、アメリカへの配慮もあったのだろう、話はそこには行かなかった。「ロシアがサリンなどの化学兵器を使った攻撃を準備している報告を受けている。さらに核兵器が使われた場合に世界はどうなるのか」とロシアの大量破壊兵器に危機感を示した。
共感したのは国連の改革についてだった。「国際機関が機能しなかった。国連安全保障理事会も機能しなかった」と指摘した。そして、「日本のリーダーシップが大きな役割を果たせると思う」と期待感をにじませた。最後は、「ウクライナに栄光あれ、日本に栄光あれ」と締めくくった。名演説だった。ロシアは日本の隣国であり、北方領土という問題を抱える。スピーチを聞いていて他人事ではないと実感した。
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