韓国で「言論仲裁および被害救済等に関する法律」の改正法案をめぐってメディアを巻き込んで与野党の攻防が続ている。改正法案は、新聞・テレビのマスメディアやネットニュースで、取り上げられた個人や団体側がいわゆる「フェイクニュース」として捏造・虚偽、誤報を訴え、裁判所が故意や重過失がある虚偽報道と判断すれば、報道による被害額の最大5倍まで懲罰的損害賠償を請求することができる。つまり、メディアの賠償責任を重くすることで、報道被害の救済に充てる改正法案だ。国会で3分の2以上の議席を占める与党系が今月30日にも強行採決する見通し。
これに対し、当事者でもある韓国のメディア関連団体6団体が「共に民主党(与党)が30日に言論仲裁法改正案を強行処理するなら、違憲審判訴訟や効力停止仮処分申請などの法的措置を取る」と27日、明らかにした。また、野党・国民の力は30日の国会本会議でフィリバスター(合法的議事進行妨害)などを通じ、言論仲裁法通過を全力で阻止すると明らかにした(8月28日付・朝鮮日報Web版日本語)。
言論仲裁法の改正法案に対して、国際ジャーナリスト連盟(IFJ、本部ブリュッセル)は公式ホームページ(8月21日付)で「South Korea: Concerns over media law amendment」との見出しで韓国政府への懸念を表明。また、韓国に拠点を置く外国メディアの組織「ソウル外信記者クラブ(SFCC)」は20日、「『フェイクニュースの被害から救済する制度が必要』との大義名分には共感するが、民主社会における基本権を制約する恐れがある」と声明を出している(8月21日付・朝鮮日報Web版日本語)。
日本の毎日新聞は「韓国のメディア法改正案 言論統制につながる恐れ」と社説(8月29日付)を掲載している。社説では、問題点として、故意や過失の有無を判断する基準があいまいなこと。しかも、メディア側に厳しい立証責任を負わせていることを指摘している。また、賠償額の算定に当たっては、訴えられた企業の売上高なども考慮される。来年3月の大統領選を控え、政権に批判的な大手報道機関をけん制しようという意図が読み取れる、としている。
内外のメディアから批判が起きている言論仲裁法改正案だが、火を油を注いでいるのが与党だ。共に民主党のメディア革新特別委員会のキム・ヨンミン委員長は27日、ソウルのプレスセンターで外国メディアとの懇談会を開き、メディアの故意・重過失による虚偽報道に対して損害賠償を請求できる言論仲裁法の改正案について、「外国メディアも含まれる」との認識を示した(8月27日付・ソウル聯合ニュースWeb版日本語)。
改正案が成立すれば、日本のメディアも対岸の火事ではなくなる。いつ飛び火してくるか分からない。損害賠償を目的に、日本の新聞・テレビ、ネットによって名誉が棄損されたとの訴えが韓国で相次ぐのではないだろうか。
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