自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★能登半島地震 メディアが伝える北陸新幹線と被災報道

2024年03月18日 | ⇒ドキュメント回廊

  北陸新幹線が金沢駅から福井県の敦賀駅まで延伸した。地元新聞各紙(17日付)は「新北陸 発進」「春を運ぶ沿線へ復興へ」と一面のフル見出しで取り上げている=写真・上=。地元メディアとすれば北陸新幹線の敦賀開業は久々の明るい話題として大きく伝えたかったのかもしれない。なにしろ元旦からこれまで能登半島地震で災害報道が圧倒的だった。暗いニュースが多い中で明るい話題を。これは読者や視聴者の心理を考えれば自然なことかもしれない。

  きのうの夕方、所用でJR金沢駅に行って来た。日曜日ということもあり。新幹線乗り場などはかなり混雑していた=写真・中=。「これは敦賀延伸の効果かもしれない」と人々の流れを思うと同時に、「能登半島地震は徐々に記憶の片隅に追いやられるかもしない」とも考えた。まったく根拠のない発想なのだが、不安を感じた。

  まもなく17年になる。2007年3月25日、能登半島で震度6強の地震が起きた。時間は午前9時40分過ぎだった。「能登沖を震源するする地震」とNHKニュースは伝え、崩れ落ちた家屋の映像を流していた。輪島市と穴水町を中心に住宅2千4百棟が全半壊した=写真・下=。いま、この2007年の地震のことを思い起こす人は少ないのではないだろうか。

  260年余り前、経済学者アダム・スミスは『道徳感情論』の講義で災害に対する人々の思いは一時的な道徳的感情であり、心の風化は確実にやってくると述べた。そう考えれば、心の風化や記憶の風化は人々の自然な心の営みなのかもしれない。ただ、変らないのは被災地の人々の心情だ。「忘れてほしくない」という言葉に尽きる。被災地の復興は一般に思われているほどには簡単に進まない。この被災地の人々と読者・視聴者の意識のギャップを埋めるために、新聞・テレビメディアには災害発生から定期的に被災地の現状と問題点、そして人々の心情を伝えてほしいと願う。

  「災害は忘れたころにやってくる」(寺田寅彦)の教訓もある。メディアの定期的な災害報道でこの教訓も生かされる。

⇒18日(月)夜・金沢の天気    くもり時々あめ


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