自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆場の創造力 キャンパス街の個性的な看板

2021年03月13日 | ⇒キャンパス見聞

   街を歩くと看板がいろいろな目につく。とくに金沢大学キャンパス周辺は凝ったものが多いような気がする。最近開業した歯科医院のネーミングを見て思わず手を打った。通りすがりに、「はぐくみの郷」と書いてある看板=写真・上=を見て、「歯医者なのに、老人ホームにあるような名前だな」との印象だった。しばらく歩いて、はたと気がついた。「はぐくみの郷」の「は」は「歯」を意味するのだと。つまり、「歯を育てる」との意味を込めている。ロゴマークも鳥が歯をわが子のように抱きかかえている。ではなぜ「郷(さと)」なのか。近くに「杜の里(もりのさと)」という地名がありそれにひっかけて「郷」とした。自己流の解釈だが、「なるほど」と手を打った次第だ。

   以前もこのブログで紹介したが、近くの大通りに面した歯科医院がオードリー・ヘップバーンをもじって「オードリー歯科 Audrey Dental Office」と名付けている=写真・下=。だじゃれというより、粋(いき)ではないかと感じ入ったものだ。「はぐくみの郷」もおそらくかなり考え抜いて付けたネーミングだろう。

   ただ、上記の2つの看板はおとなしい方だ。近くの「のうか不動産」の看板はなかなか凝ったものがある。「場の表現」が面白い。たとえば、交差点では「右へならえの人生に疲れたあたなも右折してください」、飲料の自動販売機の横にある看板では「ノドが乾いたら、人生が乾いたら」というキャッチコピーだ。強烈だったのは、警察の交番に隣接するビルでは、交番の真上部分に、「『苗加』を『なえか』と読んだ人、タイホします」と書かれた看板=写真・下、2013年撮影=だった。金沢の名字で「苗加」を「のうか」と呼ぶ。交番を絡めたこの表現は、ある種のパロディではある。著作権上は問題ないのだが、警察への「おちょくり」ととらえる人もいるかもしれない。これが原因ではないが、市の屋外広告物設置基準に違反しているとして、是正指導を受けて2013年秋に撤去されている。

   上記のように書くとこの不動産会社のイメ-ジはよくないが、学生たちの評判はよい。学生たちが部屋のカギを紛失すると、合鍵を持参して夜中でも対応してくれるようだ。屋外広告物設置基準の違反もキャッチコピーの内容ではなく、設置面積や高さなどで基準を満たしていないというのがその理由で以前から指摘を受けていた。不動産会社は今も凝ったキャッチコピーを連発している。

   では、なぜ大学キャンパスの近くにこのような個性的な看板が目立つのか。やはり、キャンパス街という場の雰囲気ではないだろうか。若い世代に注目される看板を、ネーミングやキャッチコピーを通じて発信したいという創造力ではないだろうか。

⇒13日(土)夜・金沢の天気    あめ


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