韓国の尹錫悦大統領はオムライスが大好物のようだ。読売新聞Web版(14日付)によると、政府はあす16日に東京都内で予定される岸田総理と尹大統領との首脳会談後の夕食会で、異例の2次会を設定し、尹氏をもてなす方針を固めた。1次会は銀座のすき焼き店、2次会はオムライス好きの尹氏の希望を踏まえ、洋食の名店として知られる銀座の「煉瓦亭」とする。かつて尹氏が都内を訪れた際に食べたオムライスの味が忘れられないという韓国側の意向のようだ。
洋食のオムライスの発祥の地は大阪・浪速と言われる。1925年、通天閣が見える繁華街で洋食屋を開業した20代の料理人が、オムレツと白ご飯をよく注文する客がいることに気が付いた。客は胃の具合が悪いのだという。そこで、いつも同じメニューではかわいそうだと、マッシュルームと玉ねぎを炒めて、トマトケチャップライスにしたものを薄焼の卵でくるんで「特製料理」として提供した。すると客は「オムレツとライスを合わせて、オムライスでんな」と喜んだ。これがきっかけで「オムライス」をメニュー化したのだという。
料理人は洋食店「北極星」を創業した北橋茂男氏(故人)、能登出身の人だった。生まれ故郷の石川県宝達志水町では毎月23日を「オムライスの日」と定め、「オムライスの郷」プロジェクトを進めている(「宝達志水町ホームページ」より)。
同じ能登出身のパテシエの辻口博啓氏からこんな話を聞いたことがある。辻口氏の米粉を使ったスイーツは定評がある。当初、職人仲間から「スイーツは小麦粉でつくるもので、米粉は邪道だよ」と言われたそうだ。それでも米粉のスイーツにこだわったのは、小麦アレルギーのためにスイーツを食べたくても食べれない人が大勢いること気が付いたからだ。高齢者やあごに障害があり、噛むことができない人たちのために、口の中で溶けるチョコレ-トもつくっている。
能登には人に気遣いをする文化風土があり、「能登はやさしや土までも」との言葉が江戸時代からある。ユネスコ無形文化遺産にも登録されている能登の農耕儀礼「あえのこと」は、目が不自由な田の神様を食でもてなす行事だ。そう考えると、食文化は「うまさ」というより、作り手の「やさしさ」から生まれるのかもしれない。尹大統領のオムライスの話題がいつの間にか能登の話になった。
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