CNNニュース(日本語・9日付)によると、アメリカ連邦議会下院は8日、中国の新疆ウイグル自治区でウイグル族らイスラム教少数派への強制労働で製造された物品のアメリカへの輸入や国内販売を禁止する法案を可決した。法案の概要によると、同自治区で人権侵害に関与する人物に制裁を科すことも盛り込んだ。バイデン大統領に対し自治区での強制労働に加担する中国政府当局者を含めた人物リストの提出も義務づけた。経済制裁も想定し、人権侵害に関与した人物はビザ(入国査証)発給や米国入国が禁止されるとした。
中国の人権弾圧へのアメリカの本気度が分かる。そして、アメリカは来年2月の北京オリンピックへの「外交的ボイコット」も発表している。ホワイトハウスのサキ報道官は6日、バイデン政権は北京オリンピックに政府の公式代表団を派遣しないと表明した。アメリカの選手は五輪参加を許可されるが、政府当局者を派遣しない。北京で開催されるパラリンピックについても同様の方針を適用する(CNNニュースWeb版・6日付)。政府代表団を派遣しない外交的ボイコットの方針は、アメリカに次いでオールストラリア、イギリス、カナダも表明している(BBCニュースWeb版・9日付)。
では、日本政府はどうなのか。岸田総理は7日午前、官邸で記者団に対し「アメリカが北京オリンピック、パラリンピックを外交的にボイコットするということを発表したことを承知している。わが国の対応は、オリンピックの意義、さらには、わが国の外交にとっての意義などを総合的に勘案し、国益の観点からみずから判断していきたい。これがわが国の基本的な姿勢だ」と述べた(NHKニュースWeb版・7日付)。対応を明確にしていない日本に対し、中国外務省の汪副報道局長は9日の記者会見で、「中国は東京五輪の開催を全面的に支持した。今度は日本の基本的な信義を示す番だ」とけん制している(時事通信Web版・9日付)。
まだ表面化してはいないが、迷っているのはアスリートたちではないだろうか。とくに、外交的ボイコットを表明した国々の選手陣は悩んでいるのではないか。中国の前の副首相から性的関係を迫られたことをSNSで告白したのちに行方が分からなくなっていたプロ女子テニスの彭選手の問題で、中国の「闇」が見えてきた。選手たちが中国に渡って参加したとしても、現地で何らかの「制裁」があるのではないかと身構えてしまう。あるいは、試合で正当なジャッジが下されるのかと疑心暗鬼になっているでのはないだろうか。
IOCのバッハ会長は彭選手とテレビ電話で無事を確認したと述べているが、本人が海外メディアの記者団の前で自由に語る場面が設定されない限り、バッハ会長の言葉に信ぴょう性が裏打ちされない。そして、アメリカの連邦議会下院は8日、IOCの彭選手への対応について、「北京オリンピック・パラリンピックに参加する選手の権利を守る能力と意志に疑問を抱かせる」と批判する決議を全会一致で可決した(NHKニュースWeb版・9日付)。議会もIOCを信用しない中で、アメリカのアスリートたちの混迷は深まっているのではないか。
⇒10日(金)夜・金沢の天気 くもり
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます