オレンジ色のテントの中から「買うてくだー」と声掛けする輪島の朝市のおばさんたちはとても商売上手だ。6年前の2018年の旧盆で朝市を訪れた。1個700円のカラスミ(ボラの卵巣の塩漬け)を「2個ください」と言うと、おばあさんが「3個でおまけ」と差し出したので手に取ると、すかさず「100円おまけで2000円」と請求された。2個買ったので1個はおまけだと思い受け取ったのに、「100円まけるから3個買って」という意味だった。朝市という場を少々甘く勘違いしたのかもしれない。かなり高齢に見えたが、言葉の手練手管には舌を巻いて買ってしまった。
海の幸と山の幸の物々交換がルーツとされ、千年の歴史を有する輪島朝市はことし元日の震災による火災で甚大を被害を受けた。朝市が並ぶ商店街通りを中心に240棟が消失した。このため、商いの場を失った朝市の再開は出来なくなっている。しかし、商魂はたくましい。朝市を金沢でと輪島市朝市組合の組合員による「出張朝市」がきょう金沢市金石1丁目にある金沢市漁協の荷さばき場で開かれた。震災から83日目の「初売り」でもある。現地に行ってみた。
午前9時に到着。オレンジ色のテントが30ほど並ぶの出張朝市は土曜日ということもあり、家族連れなどでとても混雑していた。「刺し身 みそ漬け」「一夜干し」「干物」などの海産物のほか、輪島塗の碗やアクセサリー、能登の塩などを販売するテントが並んでいた。一夜干しなどは飲食スペースであぶって味わうことができる。
テントをのぞくと、一夜干しをめぐって売り子の女性と男性の客が交渉をしていた。一夜干しセット6000円(送料込み)をめぐる駆け引きのようだった。客「さっき、あぶって食べた。ノドグロがうまかった。東京の知人に送りたい。ちょっとおまけして5000円にならないか」、売り子「輪島から出張して久しぶりに店を開きました。出張経費がかさんでますので、5800円で」、客「そうか、出張経費がかさんでいるんだね。では、ありがたく5800円で」。この客は2セット購入していた。
一つ気になったことがある。30の店が並んではいたものの、冒頭で紹介した手練手管の朝市おばさんたちは見当たらなかった。次の世代の若い人たちが多いという印象だった。震災を機に朝市おばさんたちの世代交代が進んでいるのもしれない。ふとそんなことを考えた。
⇒23日(土)夜・金沢の天気 くもり
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