自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「5G」絡めた東京と地方の税金分捕り論争

2019年08月11日 | ⇒ニュース走査

  全国知事会が先月23、24日の両日、富山市で開催され「地方創生・富山宣言」が採択された。これを読むと、日本の地域課題が浮かび上がる。宣言では「今日の我が国は、他の先進国に例をみないスピードで進行する少子高齢化・人口減少により、離島や中山間地域の中には今後の存続が危機的な状況にある地域が増加しており、地域のあり方が改めて問われている。」と指摘。また、東京一極集中について、「過度な首都東京への一極集中は、出生率の低下、災害のリスク管理などの問題を生じさせるとともに、地方の担い手不足を招くこととなる。」と率直に記されている。

  全国知事会を報じたローカル紙を読むと、この東京一極集中について議論の応酬があったようだ。初日の23日、地方税財源の確保に関する国への提言案をめぐって、「地方創生の推進や東京一極集中の是正により、東京から地方 への人・モノ・金の流れを促進することで・・」との表現に対し、小池東京都知事は「国内で限られたパイを奪い合っても日本全体のためにはならない」「疑問を大きく感じる」と述べ、この部分の削除を要求した。これに対し、提言案を作成した石井富山県知事は「地方はどんどん人が減る一方で、東京にあらゆるものが集まり災害リスクなど過密の弊害が起きている」と是正措置に理解を求めた。小池知事はこの後、公務を理由に途中退席したため少々後味の悪さが残った。

  東京一極集中をめぐっては、昨年2018年度の全国知事会議で大都市に集中する地方法人税の偏在是正を求める提言を採択し、今年度の税制改正で東京都から地方自治体に計9000億円が再配分されている。小池知事とすれば、これ以上東京都を悪者扱いにしないでほしいとの思いがあったことは想像に難くない。結局、全国知事会では小池知事の主張を考慮し、「東京一極集中の是正」の文言ではなく、地方創生の取り組みをより強力に加速化させるという表現でこの件は決着した。

  1週間後の8月1日、全国知事会として自民党税制調査会に要望書を手渡した。その中で、「(2)地方創生・人口減少対策のための財源確保」として。以下2点を要望している。「まち・ひと・しごと創生事業費」(1兆円)を拡充・継続し、地方の安定的な財政運営に必要な一般財源を十分に確保すべき。「地方創生推進交付金」および「地方創生拠点整備交付金」については、拡充・継続を図るべきである。また、地方創生の更なる深化や取 組みの全国展開に向け、地方の実情を踏まえた、より弾力的で柔軟な 運用を図るべき。

  さらに要望書の中で目を引いたのは、「(3)地方における5G・ICTインフラ整備への財政的支援等」である。以下要望している。第2期「まち・ひ と・しごと創生総合戦略」において、5Gをはじ めとする未来技術の利活用を、来年度から次のステージを迎える地方創生の重要な柱の一つとして位置付け、併せて具体的な支援策を講ずるべき。

  全国知事会が「5G」(第5世代移動通信システム)について、これだけ明確に政権与党に働きかけていることは初めて知った。移動通信のトラフィック量は2010年と比較して千倍以上に増大するとされる5Gを地方創生の重要な柱として打ち出している。東京と地方の税金をめぐる分捕り合戦を5Gに絡めたところが面白い。(※写真は全国知事会ホームページより)

⇒11日(日)朝・金沢の天気     はれ

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★政治と「実行力」、問われる夏

2019年08月09日 | ⇒メディア時評

   きのう(8日)学生5人を連れて、輪島市をインターンシップの事前研修に訪れた。車中で女子学生と交わした話だ。こちらから「滝川クリステルが小泉進次郎と結婚するね」と水を向けると意外な言葉が返ってきた。「私だったら進次郎は避ける。お兄さん(孝太郎)がいい」と。その理由を尋ねと。「政治家の妻って大変じゃないですか。選挙もあるし」。少し間を置いて、「女子はみんなそう言ってますよ」と。

   なるほど、女性の視線からは選挙が大きなバリアに見えるのだ。逆に言えば、それを超えて進次郎と結婚を決めたクリステルの決断力は相当なものだったろう。記者会見(7日)で進次郎が発していた「(クリステルを)選挙には関わらせない」という言葉は、ひょっとしてクルステル側の結婚の条件だったのかもしれないと今ふと考える。

   話は変わるが、NHKが報じていた最近の世論調査(8月2、3日実施)で安倍内閣を「支持する」と答えた人は、3週間前の調査より4ポイント上がって49%、「支持しない」は2ポイント下がって31%だった。2017年10月の第4次安倍内閣では「49%」は最も高く、「31%」は最も低い。つまり、数字的には安倍内閣は絶好調ということだろう。

   支持する理由では「他の内閣より良さそうだから」が47%、「実行力があるから」が20%と続いた。3ヵ月前の5月の世論調査では「他の内閣より良さそうだから」50%、「実行力があるから」14%だった。相対評価が3ポイント下がり、実行力という絶対評価が6ポイント上がったことになる。この実行力とは何かを分析してみると、韓国を「ホワイト国」から除外したことだろう。8月の世論調査では、政府が韓国を輸出管理を簡略化する優遇措置の対象国から除外する決定をしたことについても尋ねている。この決定を「支持する」55%、「支持しない」8%、「どちらともいえない」27%の数字だった。つまり、「ホワイト国」除外が実行力としてイメージアップにつながったのではないだろうか。

   おそらく次に実行力が問われるのは「憲法改正」だろう。これも8月の世論調査で尋ねている。憲法改正に向けた議論を進める必要があると思うかとの問いに、「進める必要がある」34%、「進める必要はない」24%、「どちらともいえない」34%となっている。先の参院選挙(7月21日投開票)で「改憲勢力」と称される自民、公明、日本維新の会の議席は160となる、改憲の国会発議に必要な3分の2の(164)には届かなかった。

   ここに来て、アメリカが中東のホルムズ海峡の安全を確保するため結成を検討している「有志連合」に、日本を含む同盟国などに参加を呼びかけている。イギリスは参加を表明しているが、ドイツは不参加だ。自衛隊を有志連合に派遣するかどうか、改憲の肝(きも)が「自衛隊」の明記だけに安倍内閣はぎりぎりの選択を迫れるだろう。ちなみに、同じNHK世論調査では、自衛隊派遣に「賛成」22%、「反対」32%、「どちらともいえない」37%だ。(※写真は、小泉進次郎氏と滝川クリステルさんの結婚を伝える8日付の新聞各紙)

⇒9日(金)朝・金沢の天気    はれ

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☆ビートルズ大学 「ハッピ・コート」の衝撃

2019年08月07日 | ⇒トピック往来

    イギリスのロックバンド「ザ・ビートルズ 」が来日したのは1966年6月29日だった。当時小学6年生だった私自身も少なからず影響を受けた。音楽に興味がわいていたころで中学生になり、ブラスバンド部に入った。トロンボーンを始めた。そして、2年生でエレキギターとドラムによる独自のバンドを結成したのだ。バンド名を「Bombs」とした。激しい音を出すので、「爆弾のようなバンドだ」と周囲からなじられ、bomb(爆弾)をバンド名にした。だた、ビートルズのように歌えるボーカルがいなかったので、ザ・ベンチャーズのインストゥルメンタル・サウンドにのめり込んでいった。そんなことを思い出しながら、今月3日に金沢市で開講した「ビートルズ大学」の講義を聴いてきた。

    「学長」は日本におけるビートルズ研究の第一人者で音楽評論家の宮永正隆氏=写真・上=。宮永氏は金沢市出身で、長らくオランダで家族と住んでいたが故郷に戻ることになり、金沢大学のオープンアカデミーの講座として「ビートルズ大学」を開講されることになった。場所はJR金沢駅西口から歩いて3分ほどにある金沢大学駅前サテライトの3階にある。土日祝に開講する。1講座50分で午前から夕方まで開講している。

    開講初日だった3日は午前10時20分から夕方午後5時15分まで、6講座をどっぷりと聴講させてもらった。語りで映像を交えた講義で、この日は40名余りが聴講した。居眠りしている人はいなかった。むしろ、体を揺らしながらビートズルの曲を楽しんでいる人もいた。冒頭のビートルズの来日に関する講座「ビ-トルズ来日学」ではビ-トルズが滞在した5日間のエピソードが語られた。講義の部屋にはビ-トルズが来日したときにJALフォーストクラスで配れらた記念品の扇子(俵屋宗達の画、本阿弥光悦の書)と同じ扇子=写真・下=や、武道館での公演の楽屋で使用されたコーヒーカップなどが展示された。これだけでも、どことなく当時の雰囲気が漂うから不思議だ。

     1966年6月29日午前3時39分に一行は羽田空港に到着した。実は台風の影響で11時間遅れだった。この時、タラップを降りた4人が羽織っていた法被にもエピソードがあった。宮永氏は当時法被を着せたスチュワーデスにインタビューしている。スチュワーデスには降りるときに法被を着せるという特命があった。何しろ「JAL」のネーム入りの法被だ。でも強制的に着せるわけにはいかない。そこで、臨機応変で対応してくれそうな人はジョン・レノンではないかと直感し、本人に「ハッピ・コートを着ていただけませんか」と頼んだところ率先して着てくれ、ほかの3人も追随したのだという。この「ハッピ・コートの演出」で来日のムードが国内でも一気に盛り上がった。

      講義では、こうしたビートルズにまつわる知られざるエピソードを宮永氏が取材し、その意義や音楽シーンに与えた影響について丁寧に語っている。

⇒7日(水)朝・金沢の天気      はれ
    

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★「タラタラ質問してるんじゃね~よ」

2019年08月06日 | ⇒メディア時評

   心が弾むニュースだった。女子ゴルフの全英女子オープンで渋野日向子選手が優勝した。日本選手として樋口久子選手が1977年に全米女子プロ選手権で優勝して以来、実に42年ぶりのメジャータイトルでの優勝だ。気さくに笑いながらインタビューに応じるその姿は海外でも「スマイルシンデレラ」というニックネームがついているそうだ。きょう6日午後3時30分から、帰国してた羽田空港で渋野日向子記者会見を行う様子を民放各社が生中継しているのを視聴した。

   会見で記者が海外で「スマイルシンデレラ」というニックネームで親しまれていていることについて質問すると、渋野選手は「そうやって名付けてもらえるのはうれしかったが、シンデレラは良く言いすぎ」「ゴルフは自分が楽しんでやらないとみんな楽しくないのでそこは心がけている」「世界でも笑顔は共通だと思った」と話していた。ギャラリーとのハイタッチが負担にならないかという質問に対しては、「無視されるより、注目されるほうがずっといい。大会中は、どんどんタッチをしてくれる人が増えていってすごくうれしかった」と笑顔で話していたのが印象的だった。

   また、昨年7月の西日本豪雨で出身地の岡山県が大きな被害を受けたことを質問された渋野選手は「豪雨災害のときと同じタイミングでプロテストに合格した」「被災地の人たちに何も手助けができなくて、このままでいいのだろうかと思っていた」「豪雨災害の日のことを忘れたことはない。地元の皆さんを元気づけるには私が結果を出さないといけないと思っていた」と郷土愛がにじみ出た言葉だった。

   記者会見で違和感を感じた質問も多かった。「ゴルフとソフトボール、どっちが好きですか」「うれし泣きする瞬間はありましたか」「樋口久子さんに新人類と言わせるぐらいのメンタルを身につけた秘訣は」「優勝の実感はわいてきましたか」などなど。渋野選手は笑顔で答えていたが、視聴しているこちらの方がいらいらと。

   記者会見での質問は基本的に相手の心情を引き出すものだろう。「優勝の実感はわいてきましたか」などと抽象的な質問しても、本人は「だんだんとわいてくると思います」としか答えようがなかった。つい、こちらが「タラタラ質問してるんじゃね~よ」とつぶやいてしまった。(※写真は、渋野日向子選手の優勝を伝えるイギリス「BBCニュース」Web版)

⇒6日(火)夜・金沢の天気    はれ

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☆「大騒ぎ」という病(やまい)

2019年08月02日 | ⇒メディア時評

      北朝鮮がまた2発のミサイルを発射した。報道によると、きょう2日午前2時59分と3時23分に、朝鮮半島の東部の咸鏡南道付近から日本海に向けて短距離の飛翔体を2回にわたって発射した。先月25日に新型短距離弾道ミサイルを2発、31日に新型多連装ロケット砲を2発それぞれ発射している。また、政府発表によると、日本の領域や排他的経済水域(EEZ)への弾道ミサイルの落下は確認されていないようだ。それにしても、日本海側に住む者にとって迷惑極まりない。

   アメリカと韓国の合同軍事演習が今月5日から始まるのを前に、韓国への「武力示威」だと警告(7月25日付・朝鮮中央日報HP版)している。3回連続となると、逆に合同軍事演習をチャンスととらえて、発射実験を繰り替えているのではないか勘ぐってしまう。単なる警告ならば、新型の短距離弾道ミサイルや新型の多連装ロケット砲を発射しないだろう。

   北の金正恩氏と負けず劣らずなのが、韓国の文寅在大統領ではないだろうか。日本が安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る「ホワイト国」(優遇対象国)から韓国を除外する政令改正を行うことについて、韓国側が大騒ぎしている。今月末に更新期限を迎える日本と韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)にも韓国側は更新しないと揺さぶりをかけている。

   そもそも、ホワイト国は政府が信頼できる輸出先だと認める国だ。武器や大量破壊兵器、それに関連する資材、兵器の汎用品などについて経産大臣の許可が必要だ。ところが、韓国側が認めているように、武器製造に転用可能な戦略物資の違法輸出を摘発した事例が2015年から19年3月までに156件あった(7月12日付・東京新聞HP版)。日本政府が信頼できないというのであればホワイト国を除外するのが道理だろう。それを、アメリカに、いわゆる「告げ口外交」で攻勢をかけたり、アメリカにとっても迷惑な話だろう。

   政府は午前中の閣議で、ホワイト国から韓国を除外する政令改正を決定した、とのニュース速報が流れた。政令公布の21日後に施行され、今月28日に発動する。冷静に対応すればまったく問題のない通商問題なのだが、あえて大騒ぎする。韓国の病(やまい)かもしれない。(※写真は、イタリアのフィレンツェにあるサンタ・クローチェ教会の壁画に描かれている「聖十字架物語」)

⇒2日(金)午前・金沢の天気     はれ

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