10/14の日没後、紫金山・アトラス彗星を狙うために集まった方々が形成したカメラの砲列
の中に自分も加わって、ミラーレス一眼でターゲットとなる彗星を撮影しました。
で、最初の取得画像がコレです。
【紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)10/14 18:05】
キヤノンEOS Ra+SAMYANG135mmF2 ED UMC,F5.6,ISO3200,L41フィルター,
露出1.6秒×18コマ(彗星核基準加算コンポジット),三脚使用(固定撮影)
日没から1時間も経ってないので背景がまだ明るいですが、雲間に長~い尾を伸ばした姿を
捉えることができました。よく見ると、頭部から右斜め下側に通常とは真逆の方向に伸びた
ような尾が薄らと確認できます。そこで、頭部をトリミングして強調処理を施すと・・・
淡いながらごく細い光の帯が写っているのが分かります。いわゆる「アンチテイル」という
尾で、太陽-彗星-地球の位置関係に依り、扇形に広がったダストテイルの一部分が見掛け上、
太陽の方向に伸びたように見えるものなんですが、こんな風にレーザービームみたいな鋭い
形態になるのは凄くレアな現象ではないかと思います。ちなみに、この細いアンチテイルは
太陽観測機SOHOのコロナグラフでも捉えられました。YouTubeにその様子が記録された動画
を見つけたので貼っておきます。
その後、雲隠れ状態が続いてしまって今日はもうダメかなと思ったら、運良く雲の切れ間に
また入ってくれたので撮影を再開。高度が低くなって背景の色味が変わってしまいましたが
こんな画像が得られました。
【紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)10/14 18:23】
F2.8,ISO3200,露出1.6秒×20コマ(彗星核基準加算コンポジット)
※その他の撮影条件は最初の画像と同じ
画像上方に伸びる尾の濃淡が分かりやすくなった気がします。アンチテイルも雲越しながら
確認できます。
さらに12分後、薄明終了後に得られた画像がこちら。
【紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)10/14 18:35】
F2.8,ISO6400,露出1秒×30コマ(彗星核基準加算コンポジット)
※その他の撮影条件は最初の画像と同じ
空は暗くなりましたが、彗星の高度はかなり下がって地上の街灯りの影響を受け始めたため
画像下部が黄ばんでしまったり、横に棚引いた雲が邪魔だったりしますが、尾の写り具合に
ついてはコレが一番イイ感じになりました。感度を結構上げたとは言え、たった30秒ほどの
総露出時間でこんなに綺麗に写るとは思いもよらなかったです。
これほど肉眼で良く見える明るい彗星に出会えたのは、1997年春に見られたヘール・ボップ
彗星(C/1995 O1)以来です。今世紀に入ってからは、2007年のマックノート彗星(C/2006 P1)、
2011年のラヴジョイ彗星(C/2011 W1)が大彗星となりましたが、いずれも南半球でしか好条件
で見られませんでしたし、2020年のネオワイズ彗星(C/2020 F3)も大彗星の1つに数えられる
ものの、日本(特に本州)では梅雨明けが遅れて彗星の最盛期が天候不順となって、北海道や
沖縄などの限られた地域しか晴天に恵まれなかったことと、コロナ禍で遠出が憚られる状況
にあり、観望や撮影が満足にできなかった苦い思い出があります。ということで個人的には
この紫金山・アトラス彗星を21世紀に入ってからここまでのNo.1グレートコメットに挙げたい
と思います。