「図解入門よくわかる 最新パワー半導体 基本と仕組み」佐藤淳一 著
本屋さんで平積みされていたのが目にとまり、1500円 (+消費税) という安さに釣られて衝動買いしてしまいました。最新のエネルギー技術に不可欠な電力変換を担うパワー半導体の入門書です。「よくわかる」、「図解入門」といった文句が並んでいて、一見すると一般向けの読み物のような印象を受けますが、中味はかなり専門的です (でなければ、わざわざ買いません)。電気・電子分野の知識がないと読めません。回路図もフツーに出てきます。
最近発展が目ざましい新エネルギーには、太陽光発電や燃料電池など、直流の電力を扱うものが増えています。現在の送配電系統を流れる電力は交流ですから、発電した直流を交流に変換する必要があります。変換にあたっては、安定した周波数 (50Hzまたは60Hz) で、しかも波形の整った電圧・電流に (高調波を出さずに) 変換することが求められます。
電気自動車にもパワー半導体は欠かせません。電池から取り出した電力 (直流) の電圧や周波数を変化させて効率的にモーターを駆動したり (インバータ制御)、ブレーキをかけるときに発電した電力で電池を充電したり (回生ブレーキ) するのに使います (インバータ制御も回生ブレーキも、電車では20年以上前から使われていた技術ですが、ここ何年かで自動車への搭載が現実的になってきました)。
パワー半導体は、直流と交流の変換に使われるだけではありません。風力発電では原理的に直接交流電力を発電できますが、パワー半導体が使われます。
風車が一定の速度で回転していれば、発電機から出力される電力も一定の電圧・一定の周波数で安定します。しかし、実際の風は季節や時間によって変動しますから、風車の回転速度も一定とは限りません。風車の回転が所定の範囲を外れたら発電を停止するのもひとつの方法ですが、それでは風車の稼動率が下がってしまいます。最新の風力発電では、条件の悪い風で発電した“質の悪い”電力も無駄にしないように、パワー半導体で電力を整形するようになっています。
そんなこんなで、急速に社会に広がりつつあるパワー半導体。新エネルギー技術とあわせて、パワー半導体についても勉強します。