椅子に座って音楽を聴いていた。
何時もの様に”犬くん”が膝に載っかかってきた。
当たり前の様に、私はその行動を許した。
暫くすると右の太ももに”暖かい感触”を感じた。
今までに無い行動であった。
”オシッコ”した様である。
そして、強く叱責した。
不覚にも嚙まれる始末となった。
犬に嚙まれ、出血した記憶は、過去にもある。
三十数年程前に、自家用の船を持つ友人の招待で舟釣りに出かけた。
出港後、暫くして懸命に泳ぐ犬を見つけた。
友人に「助けよう!」と操船してもらって、手を差し伸べた。
不覚であった。
すぐさま、友人の判断(釣りを中止)もあり、病院に行った。
行き着いたのは地域の総合病院であった。
病院の院長(女医)が診察した。
犬に嚙まれた部分の手当てをして、治療は終わった。
若い男性医師が「血清を投与?しましょう!(医療の常道では?)」と提案した。
「ワクチンを投与する事と、狂犬病による発症を比較すれば、投与しない方が良い」
加えて「この三十年程は狂犬病(発症)の事例はこの地域にはない」と説明した。
しかし、若い男性医師は「結果は(院長の責任で)知りませんよ!」
院長は、現状の発症(この地域での狂犬病の)から投与(注射)しない判断をしたということであった。
以後、副作用にも惑わされることなく、今あるは”あの医師”の判断と感謝している。
正直、我が(飼っていると言う思いの)犬に嚙まれた事がショックであった。
”犬・畜生”と言った母の言葉が思い出される。
”犬に嚙まれた!”と不安になって(子に)相談した。
犬くんとの処世も、今に至って、考え直さなければならないと思った。
なれど、当の”犬くん”は、何事も無かった様に、丸くなって”クウクウ”と穏やかに眠っている