宇治上神社を出ると早蕨之古蹟があります。
年改まり、宇治の山荘にも春が来た。
今年も山の阿闇梨から蕨や土筆などが贈られてきた。
中君(なかのきみ)は亡き父君や姉君を偲びつつ
この春はたれにか見せむ亡き人の
かたみにつめる峰の早蕨
と返歌なさった。
二月の上旬、中君は匂宮の二条院へ迎えられ、行先の不安を感じつつも、幸福な日々が続く。
夕霧左大臣は、娘の六君を匂宮にと思っていたので、失望し、薫君にと、内意を伝えたが、
大君の面影を追う薫君は、おだやかに辞退した。
花の頃、宇治を思いやる薫君は、二条院に、中君を訪ねては懇ろに語るが、匂宮は二人の仲を、疑い始める。