子どもの不登校、学校にどう伝える?先生からも「助かる」「欲しかった」対応策の依頼文、市民団体が作成
2022/10/14 12:00
(東京新聞)
不登校の子の親が学校に対応への希望を具体的に伝える依頼文のフォーマットが評判だ。学校との慣れないやりとりに悩む保護者のため、川崎市高津区の市民団体「多様な学びプロジェクト」が作成した。「子どもが不登校になると親は混乱する。どんな選択肢があるのか、今どんな状況なのかを整理するために活用してほしい」と呼びかける。(竹谷直子)
◆教員の引継ぎ、負担だった経験から
4月からホームページで公開しているフォーマットは、あいさつ文を含むA4、3枚。10問あるチェックリストに答えていく形式で、出欠連絡の方法や登校の際の配慮など、保護者が希望内容にチェックすることで学校への依頼文が完成する。
例えば、学校からの家庭訪問については「控えてほしい」「事前に相談」などの回答例があり、給食費についても「毎月払う」「日割り計算で支払う」など具体的に示されている。
フォーマットは、プロジェクトが不登校や、学校に行き渋る子どもの保護者を対象に3月に行ったアンケートの回答を基に作成した。10日間で約630件の回答が寄せられ、約9割が学校とのやりとりに困難を抱えていたという。
メンバーの久保田希さん(52)も子どもが小学1年生のころに不登校になり、年度ごとに新しく代わる教員への引き継ぎを負担に思った体験がある。「親から学校側にきちんと伝えなければ」とフォーマットの作成を思い立った。
◆フォーマットあることでスムーズに
小学4年の息子が3年生のときに不登校になったという男児の母親(40)=神奈川県茅ケ崎市=もフォーマットを利用した。「不登校になりたてのときは知らない情報がたくさんあった。学校側にもしっかり読み込んでもらえて、話しがしやすかった。親の負担が減ることで子どもへの声の掛け方も変わった」と歓迎した。
不登校新聞の代表石井志昂代表(40)は「知る限りでは全国初の取り組み。学校との面談や調整は親にとって長年苦しんできた課題」と言う。「親は、伝えたら先生に嫌われるのでは、わがままと思われるのではと葛藤する。先生側としても聞きづらいこともあるが、このフォーマットがあればスムーズになる」
不登校児童生徒数は8年連続で増加し2021年度に19万人を超えて、過去最多となった。小学生では8年前の約3倍の人数に急増している。
フォーマットは口コミやネットなどで拡散され、プロジェクトのサイトには利用者から歓迎の声が、続々と寄せられているという。生駒知里代表(44)は「反響に驚いた。学校の先生から『助かる』『欲しかった』と言われたのは意外だった」とし、「困っていてもヘルプを出せない人もいる。伝えていいんだと思ってもらえれば」と話した。
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