金融資産は今すぐ現金化せよ (ベスト新書 208)須田 慎一郎ベストセラーズこのアイテムの詳細を見る |
須田氏はテレビのコメンテーターなどでよく見かける。
話はわかりやすい。本書も内容はわかりやすい。
その主張の基本は「このえらいご時世に、大きく値下がりする可能性があるような金融商品を持つようなことはしない方が安全ですよ」ということだろう。
小豆島でグルソブ投信を買っている人が多いなんていう話はちょっと面白かった。
ただ、わかりやすくしようとするが故に、記述だけを見ると明白に誤っていると感じた部分がある。
著者はこう書いている。
「改めて申し上げておきたい。
・マーケットの予想は当たるはずがない。
・リスク分散には意味がない。」
書籍の中で、実際、この部分は太字になっている。
まあ、主張はわからないでもない。
金融の専門家とかいう人の予想を当てにして運用をしたりすると、痛い目に合うかもしれないということならそのとおりだろう。
が、実際のところは「予想は当たることもあればはずれることもある。」というのが正しい。つまりは、あてにはならないし、さして意味はないということである。
次の「リスク分散は意味がない。」。これはさらにまずい。
言いたいのは、いろんな金融商品の価格が一斉に下落するような状況下では、分散したとしても損失を回避することはできないという程度の意味だろう。
しかし、損するか儲かるかはその時々の状況次第であるが、特定のアセットクラスに集中投資するのと比較して、異なったアセットクラスに分散投資することは、パフォーマンスを安定させる(リスク・リターンを下げる)という意味で明らかに効果はあるだろう。
本書の初版は2008.12.16である。まあ、こういう時期であれば、この書名はその時の状況に応じた「適切」なものだったかもしれない(セールス用という意味で)。
が、同時期、私自身は「金融資産は今すぐ現金化」する必要があるとはちっとも思わなかった。それは私自身の状況においてという意味でである。
私自身は株式は主要な金融商品の中で非常に有望な投資対象であり続けると考えているし(これは日本に限定してということではなく)、私自身の性格とおかれている状況下で取れるリスクの範囲は取っていくつもりだ。