「人生の収穫」曾野綾子著 2011年9月30日 河出書房新社刊
なんとも大仰なタイトルである。帯には「老いてこそ人生は輝く」とある。随分張り切ったものだ。しかしこれはどうも出版社の思い入れらしい。
本の中身は、もう少し淡々と生き方について語られている。私は知識人というと、宮崎哲弥、姜尚中、女性では櫻井よしこ氏などを思い浮かべるが、曾野綾子氏もその一人だった。イメージとは少し違い、随分行動する人である。
この本は、ちょっと古いが「個人の品格」と名付けたいくらいの内容である。倫理にかかわるエッセイです。決して大上段に振りかぶってはいないが生き方について、やわらく説いている。藤原正彦と共通する、日本人の良さを見つめている。
特に一章と四章が私には面白かった。良き時代の日本人の生き方、人間としてのきちんとした考え方について示している。
例えば、「やりたいことをやるのが自由ではなく、人間としてすべきことをするのが自由だ」と述べていることなどは興味深い。
その他項目だけでも一部挙げてみると
人脈を使いさえしなければ人脈はできる
世間の常識に刃向かっても自分独自の価値観を持つ
「したいことはしつくさねばならない」は思い上がり
「損なことを選べる」という魂の高貴さ
苛酷に耐えるのが人生だという認識
悪意の人より善意の人が怖い
理由なく信じることは、愚かなことである
最後の瞬間まで日常性を保つこと
など、とても面白かった。一読をおすすめする本である。