親知らず子知らずの断崖
残暑厳しい北陸の旅だったが、暖かさを感じたのは人の心だ。
八尾へ行ったついでに、少々日本海沿いを旅した。八尾から富山を抜け、国道8号線を北へ向かう。
まずは親不知子知らずの断崖を見るが、とても通り抜けられるようなところではない。
日本海は干満の差が少なく、波も荒いのに、この波打ち際をどうやって通ったのだろう?
確かに他人のことなど構っておられないようなシチュエーションだ。
近くの道の駅親不知ピアパークで昼食をとる。名物の「たら汁」、近くのドライブインなどではやたらに看板が出ている、この汁を食してみた。ちょっと薄味の味噌汁にタラのぶつ切りが2切れ入っている。ネギが少し入っているが全く生臭くない。予想に反して結構おいしい。魚が新しいせいだろうか。ぬる燗によく合う。定食についてきた刺身も美味しい。7勺ほどの徳利でホロッとしてしまった。
器を別にすれば、定食一つにもいい加減な感じをうけない。
レストラン前の風景
能生道の駅の風力発電器
目の前は静かな海ではある。夫婦岩に似た岩が海中にでている。のんびり旅を進める。道の駅に軒並み立ち寄る。風力発電と観光船が泊まっている能生の道の駅で、立ち寄った鮮魚センターでは破格の肴に驚いた。手のひらより少し大きい鯛が20匹近く入っているスチロールの箱が何と1000円。高級魚ののどぐろ(アカムツ)が3匹とカサゴとソイ?で3500円など、破格であった。今夜帰らないので残念ながら手が出なかったが、見るだけでも満足だった。
高台に立つ旅館
絶品が並ぶ夕食。このほかのどぐろの焼き魚を食した。
今夜の泊まりは鵜の浜温泉の割烹旅館「三景」。高台に立つ小さな宿だ。出迎えてくれた女将さんは上品な感じのよい人だ。北陸温泉宿の女将のポスターにも顔が出ているが、実物のほうがはるかに良い。早速温泉に行く。綺麗に掃除された、鉄分がこそうな塩辛い湯。温度が熱からず、ぬるからず、絶妙だ、湯船も浅からず、深からず、入りやすい。半露天野湯は外気にあたり気持ちが良い。湯の花も鉄分のせいか赤いが、気になるほど多くはない。湯の花のことを知らない若いお客が、掃除がされていず、垢が溜まっているなどと誤解をしたようだが、湯船の周囲を見れば清潔この上なく掃除されているのに、観察眼と知識がが足りないせいなのだろう。
楽しみの夕食はさすが割烹旅館と銘打つだけあって、お刺身は勿論、かにみそ豆腐、南蛮漬け、夕顔の煮付け、かに、焼き魚など、どれもそのうまさに唸った。
中居さんが薦めてくれた「男の酒」もうまく肴にピッタリ合った。
旅館から見る鵜の浜方面
海岸
翌朝浜へ散策に出た。海水浴場は撤収の最中で、まだ暑さの残る浜に人魚の像が寂しく一人ですわっていた。
朝飯も手抜きなく美味しく、コシヒカリの米飯を活かすお菜に囲まれ、幸せな気分だ。「品数があればいいんだろ」というのではなく、一つ一つに手数と気持ちがこもっているようだ。給仕をしてくれた中居さんの応対もよく気がつき、暖かい応対で気持ちよく食事を終えた。
この宿は周りに何とて無いが、癒しを旅に求めるのならば、北陸の暖かさを感じるおすすめの旅館といえる。料理、温泉、この旅館の人(女将さんだけでなく全体の)の応対と3拍子揃って暖かい。凍える冬に温泉と人の心の暖かさが身にしみるだろうなあ。日本の温泉宿の典型であろう。
美味しかった朝食