安生正「ゼロの激震」宝島社文庫 2017年刊
「ゼロの迎撃」「生存者ゼロ」に続くゼロシリーズ第3作。著者得意のパニックサスペンスである。これまでは他国のテロ集団、病原菌との戦いだったが今回は、地球のマグマ変動との戦いである。
栃木と群馬の境にある金精峠、ついで足尾銅山跡、秩父の山奥と火山活動がが刻々と東京に迫る。なぜ唐突にこんな動きが出てきたのか、首都を守る、日本を守る方策はあるのか、まるで日本沈没とシン・ゴジラをあわせたような筋書きである。
地球の構造や火山活動について著者はずいぶん勉強し、詳しく登場人物に説明させるが、このあたりはやや冗長である。又、経産省出身で国策会社幹部に入ったのエリート官僚の挫折と転身にはやや飛躍がある。
しかしそれらを踏まえても、主人公の生粋の技術者とPTSDに悩む患者の間で活躍する姿は、淡々としているだけにかえって迫力がある。自動車や産業活動で地球温暖化を招くことは推測できても、二酸化炭素の地中投棄が火山活動の引き金になるというのは、牽強付会ではなかろうか。又それが40キロの立坑の底で爆発をさせたら火山活動が沈静化するというのも、すっと胸には落ちてこない。
自分の理解力を試されているような小説であった。