すみだトリフォニーホール
プログラムも立派だ
ぐっと冷え込む1月中旬、NTTフィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会にでかけた。場所はすみだトリフォニーホールである。小ホールでは東芝の楽団の演奏会が催されていた。パイプオルガンが威容を見せる立派なコンサートホールでここならN響が演奏してもおかしくない堂々たるホールである。
こうした企業名の着く楽団の演奏会は初めてでどんな演奏を聞かせてくれるのだろうかと興味津々である。
演目は ベートーヴェン「レオノーレ」序曲第3番OP72b
シューベルト交響曲第7番「未完成」
メンデルスゾーン交響曲第3番「スコットランド」
指揮は高橋勇太である。コンサートマスターの高橋聖子氏が長男の知り合いだそうで、演奏者はNTTグループの社員や家族OBで構成されている。
NHKホールより大きな舞台にこぼれんばかりのプレイヤーが座を占め、どのパートも複数の人が演奏を受け持つフルオーケストラだ。趣味の同好会の発表会位を予想していたのだが、どうしてどうして堂々たる演奏である。久しぶりに聞いたベートーヴェンはオーケストラの醍醐味を十分味わせてくれる、重厚な弦の響きだし、未完成はハーモニーを楽しませてくれた。「スコットランド」は楽章の間の小休止のない珍しい構成で、最後のフィナーレに突き進む。大いに盛り上がって演奏を終えた。
弱い音、柔らかな音の部分が、もう少しだけきれいに響けば、十分プロ楽団に匹敵できるのではないかと思われる出来栄えであった。指揮が非常に丁寧できめ細かく行われていた。プロ楽団と違いこういう指揮でないとレベルが保てないのだろう。はじめ真面目すぎて、「もう少し楽しく」、或いは「情感を込めたら」と思ったのだが、私の勘違いであった。
例えばこの楽団とプロ楽団との差は、実業団野球とプロ球団とのさほどあるのだろうかと思うと、主に週末練習でここまで演奏できるのはすごい事だと思う。
アンコール曲葉シュトラウスのトリッチ・トラッチ・ポルカ、雷鳴と電光、ラディッキー行進曲、観客の手拍子を誘い楽しい幕切れであった。これだけ楽しませてくれるのならまた来ようと言う気になって、余韻を楽しみながら帰途についた。企業の風格と余裕を感ぜさせる素晴らしい文化活動である。