中村文則「悪と仮面のルール」講談社文庫 2010年刊
前に読んだ作品ではよくわからなかったのでもう一冊読んでみた。相変わらずの才能豊かなストーリー展開、語り口の旨さだ。
しかしこの作品では、「悪」=「邪」についての根源的な問いかけをしている。悪というのは相対的なものではないか、生きることに比べてどうか、などという問いかけである。なぜ人を殺してはいけないかという難問にも繰り返し述べている。
会話の多い小説なので登場人物に何かと語らせているが、純文学畑だけあってこうした問題について正面から述べている。2005年芥川賞、2010年大江健三郎賞を受賞している。
少し解りかけてきたというか、馴染んできたというか、そんな感じがしてきた。もう一冊読んでみたらもっと分かるのかもしれない。