和田はつ子「料理人季蔵捕物控」シリーズ。
この本は、高田郁の「みおつくし料理帖」シリーズに若干似ているが、こちらは捕物仕立て、向こうは修行、人情ものとの違いがある。いずれも畏友が貸してくれたものだが、どちらかと言えば生真面目とも言うべき人がこんな分野の本に着目するのが意外である。
それはさておき、主人公の季蔵は武士上がりの料理人、許嫁が主君筋の悪たれ息子の策略の餌食にされ、しかもいざこざの修羅場にいたせいで、ショックに見まわれ虚脱状態に陥りっぱなしになってしまった。
そんな中で季蔵は拾ってくれた料理屋の主人の後を継ぐ(この主人が裏の稼業として奉行の陰の働き人を務めている)事になった。主人公は様々な季節感をもった料理の創造、工夫をしながら、一方、事件の難問の解決に活躍する。この難問解決は大抵が、犯人、被害者周囲の聞き込みから、事情通や目撃者が現れ、真相が暴露されるというパターンが、少々安直だが、料理の発想、完成までの手順がなかなか凝っている。
みおつくしはいかにも女性作者の感がするが、こちらは料理の工夫を除けば男性と言っても十分通る。8巻ほど読んで少々パターン化が見えて来たがこれはこれで肩の凝らない読み物として楽しめる。