トヨタの本気

 今月20日、トヨタは2006年の生産を906万台(ダイハツ工業、日野自動車を含み全世界において)とすることを発表した。これが計画通りとなればトヨタはGMを抜き生産台数世界一、世界一の自動車メーカーとなる。第二次世界大戦後にヨチヨチ歩きを始めた日本のトヨタが、ヨーロッパで生まれアメリカで育った自動車産業の雄になる日が来るのだ。

 「日本のトヨタ」と書いたが、トヨタはいまや全世界に工場を持つグローバルな企業である。かつては小さくて燃費の良くて廉価なクルマのメーカーであったが、アメリカにおいてはレクサス・ブランドの成功により高級車メーカーとしての地位も確かなものとし、いち早くハイブリッドカーを開発し、新しい時代の低公害車でもトップを独走する企業でもある。世界一の自動車メーカーとしての風格をすでに備えていると言っても良いだろう。

 そのトヨタがどうやらF1でも本気になったようだ。

 11月末、トヨタは2006年シーズン用マシンTF106を発表。この異例に速い新マシン登場で周囲を驚かせたが、今度はトヨタF1の運営会社であるTMGの冨田社長が「明らかに、初優勝を遂げるというのはわれわれのまず果たすべき目標だ。(中略)フォーミュラワンで成功を収めるというのは、F1に参加した以上われわれの使命であることは間違いない。われわれが今年(来年?)は果たすべきは、まさに優勝、それだけなのだ」と2006年中の初優勝に向けて檄を飛ばした。

 そしてこんどは「トヨタ、ライコネンに巨額オファー提示?」のニュースだ。
2005年のチャンピョン、フェルナンド・アロンソが2007年にマクラーレンに移籍することについては今月19日に書いたばかりだが、アロンソの移籍により他のドライバーの移籍話が一気に噴出する結果となっている。その筆頭がキミ・ライッコネンだ。

 ライッコネンには以前からフェラーリへの移籍の噂が絶えなかったが、アロンソのマクラーレンへの移籍が発表されて以降、噂は一気に現実味を帯びたものとなってきている。22名(2006年シーズンのレースドライバー)のF1パイロットの中でも優勝できるドライバーはその1/3。ライッコネンはまさにその筆頭だから、どのチームも欲しい。

 問題はライッコネンが来てくれるだけのマシンを作れるのか、見合うギャラを出せるのかの二点だ。トヨタは勝てるマシンを作る自身があるのだ。世界一の自動車メーカーというステータスも手にすることになる。そしてライッコネンをドライバーに迎えることが出来れば、マクラーレンやかつてのフェラーリのような常勝チームも夢ではないということだ。

 それにしてもトヨタ。独『ビルド』紙が報じるところによれば、トヨタがライコネンに対して提示した金額は5年間の総額が1億ユーロ(約138億円!)というのだから驚きだ。これが事実だとすれば彼の年棒は約28億となり、高すぎると指摘されている現トヨタのドライバー、ラルフ・シューマッハの19億円(推定)を大きく上回り、フェラーリのミヒャエル・シューマッハの44億円(推定)に次ぐF1界2番手のものになる。

 豊富な資金にものを言わせての優勝、年間タイトル獲得は果たしてあるのか。


 例によって記事内容とは無関係の今日の1枚は、旧東京音楽学校奏楽堂で撮影したものです。
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