横濱

 年末年始の楽しみ用に本を幾冊か買ってきた。郷秋はテレビを見ないから、その時間の多くを活字を眺めて過ごす。活字と言っても別に難しいものではない。新聞であったり趣味の雑誌であったり、時には気軽な小説だったり、新書や選書であったりもする。本を読むという程の事ではなく「活字を眺めて」過ごすのだ。

 昨晩、夕食後に急に思いついて駅前の書店まで買いに行ってきたのだ。その中の1冊はちょうど発売直後であった「考える人」(新潮社)の2006年冬号。これについてはそのうちに別項で登場するかも知れないが、今日書きたいのは「横濱」だ。「横浜」でも「横浜ウォーカー」ではなく「横濱」だ。「濱」の文字にこの雑誌のこだわりが隠されているのに気が付かれたことだろう。

 一昨日、神奈川新聞で見かけた記事について書いた。この「横濱」も実は神奈川新聞社発行の季刊雑誌なのだが、一般的な雑誌とは少し変わったところがある。奥付けを見ると、こう書かれている。「編集:横浜市市民局広報課・神奈川新聞 協働編集」。販売店も限られる。市役所、各区役所などで販売されており、一般の書店での取り扱いはどうやら限られた書店のみとなっているようだ(「協働」の文字にもこだわりを感じる)。



 事実、最初に訪れた青葉台駅周辺では一番大きな書店、ブックファーストでの取り扱いはなかった。まさかないはずはないだろうと散々探したが結局見当たらず、レジで聞いたところすぐに端末機で検索してくれはしたのだが、その答えは「横浜ウォーカーならございますが」であった。「横濱」だと言っただろう! 仕方がないので次いで大きい文教堂に行ったところ、こちらにはちゃんと並んでいた。

 どんな体制で編集しようと販売しようと、本(雑誌)の勝負どころは、勿論その中身だ。今号は96ページの本文のうち約1/3を特集の「横浜郊外の隠れ名店!」に割かれているが、これに目を奪われてはならない。本号の真髄は「横濱の秘めたる歴史―谷戸のくらしと食事事情―」であり「町の記憶・世代別に語るわが町の原風景」である。

 「横濱の秘めたる歴史」では現在港北ニュータウンとなっている都筑区が、かつて農村地帯であった当時のことが紹介されている。点在する谷戸で暮らす人びとの様子が活写され、当時の様子を彷彿とさせる。今となっては1970年以降の大規模な宅地造成により当時の姿を見ることはなかなか困難ではあるけれど、そんな横浜の原風景がまったくなくなってしまったというわけではない。

 我田引水ではあるけれど、私が毎週末に歩いている青葉区恩田地区には横浜の原風景ともいえる谷戸の暮らしが現代のそれと同居しながらも残されている。詳しくは website恩田の森をご覧いただきたいが、果たしていつまでこの姿を保つことができるのかはわからない。が、しかし失われてしまった谷戸が多い中で比較的良く残されている地域があることも知っていただきたいのである。

 さてこの「横濱」、そんなに古くからあるわけではなく、初号が2003年夏に発売になった季刊誌である。過去の主な特集記事を拾ってみると「横浜の街はまるごとテーマパークだ!」「ペリーが見た横濱・Japan」「これぞ、横浜の食!」「山手界隈散歩」「横浜・ホテル物語」と横浜市民ならずとも手にとって見たくなるタイトルが並んでいる。バックナンバーは横浜市刊行物サービスコーナー(231-0017 中区港町1-1 Tel:045-671-3600)で手に入るようである。

季刊誌「横濱」 編集:横浜市市民局広報課・神奈川新聞 発行:神奈川新聞 定価:500円(税込み)最新号は12月23日発売のVol.11 2005年冬号。横浜市のサイトでも大々的に宣伝してる。

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