猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

原題は『自閉症の世界』でなく『ニュロー諸族』

2019-03-14 23:47:30 | 奇妙な子供たち

スティーブ・シルバーマンの『自閉症の世界』(講談社ブルーバックス)の翻訳に誤りが多すぎると、「サイコドクターにょろり旅」(「にょろり」と以下引用)がネットで指摘している。読んでみてその通りだから、まことに残念である。

例えば、witches' Sabbatを「安息日の魔女たち」と翻訳している。しかし、「'」に気づけば、文法上、witchesが所有格でSabbatにかかるから「魔女たちのサバト」としか訳しようがない。また、「安息日に飛びかう魔女たち」なんてありえないイメージで、翻訳者たちが意味を考えないで字面だけを追っているからである。

たぶん翻訳者の正高信男は共同訳者の入口真夕子に訳を任したままチェックをしなかったのであろう。いわゆる「名義貸し」である。指摘されている間違いは翻訳ソフトが犯しがちな誤りで、文脈を考えれば、すぐおかしいと気づくものばかりである。
これは小保方晴子事件と同じ構図である。京大教授の正高信男は小保方晴子の悪口を言う資格がない。

「にょろり」によれば、『自閉症の世界』の原題は『NeuroTribes』で、欧米では数々の賞を受賞した話題作とのことだ。実際、自閉スペクトラム症の子どもたちやその親たちに共感をもって書かれており、私のNPOの仲間たちに薦めようと思っていたので、とても残念としか言いようがない。

「にょろり」は、この原題に著者シルバーマンが特別の思いを寄せている、と言う。すなわち、NeuroTribes は認められるべき「ニュロー諸族」なのだ。私の時代の言葉で言えば、「新人類」あるいは「ミュータント」なのだ。その意味で、第6章のハイテク産業やSFに携わった「自閉症的」英雄の列伝を大幅にカットした翻訳は、原著の趣旨を無視したものと言える。訳者はハイテクの世界にうといから第6章を大幅にカットしたとしか思えない。

原著は、「自閉症」が「何であるか」を解明することではなく、「自閉症」とか「アスペルガー」とか言われる人間たちの権利宣言である。したがって、副題 The Legacy of Autism and the Future of Neurodiversityは、自閉スペクトラム症の子どもたちとその親たち側からの言葉として受け取らねばならない。一般にLegacyは必ずしも良い意味ではなく、都市「伝説」のように「ウソ」という響きがある。Neurodiversityこそ、著者の言いたい「多様性」を認めよ、という権利宣言である。

講談社も、小保方晴子の悪口を言うような正高信男に、訳のチェックを依頼すべきでなかったし、原著の趣旨をあいまいにする原題、副題の変更をすべきでなかった。

なお、著者シルバーマンは自閉スペクトラム症の定義範囲を広げよ、言っているように思えるが、私は、「症」の定義範囲を日常生活の支援が必要な者たちに限定し、それより、社会がNeurodiversity(ニュロー多様性)を受け入れ、良き隣人として「ニュロー諸族」と共存できるようにもっていくべきである、と考える。

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