夫の大江匡衡(まさひら)の死後、長谷寺詣でした夜、親切な人から草枕をいただいて詠んだ、という一作。彼を詞書で、「頼み侍りける人」(頼りにしていた人)と記した妻。夫婦愛の深さを感じる。
【補注】○ひとり露けき=ひとり(旅しながら)涙する。「露」はさらに「草」の縁語ともなる。
○赤染衛門=赤染時用(ときもち)、実は平兼盛の子か。「歌で和泉式部と並び
称せられた。」(広辞苑) 80代半ばまでの長命。
【補説】初瀬寺 奈良県桜井市初瀬にある、いまの長谷寺。同寺のウェブ・サイトには
こう書いてある。
当山は山号を豊山(ぶさん)と称え、寺号を長谷寺(はせでら)と申します。「こ
もりくの泊瀬山」と万葉集にうたわれていますように、この地は昔は豊初瀬(とよ
はつせ)、泊瀬(はつせ)などと美しい名でよばれていたので、初瀬寺、泊瀬寺、
豊山寺とも言われていました。