2006-0523-yms043
あの方は桜の散った寂しさに
残される子を重ねていたのね 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=詞書に、父が亡くなって家も荒れたけれど、桜は春を忘れずにやって来て、きれいな花を咲かせていますよ、との便り。そう言えば、彼、桜の咲く喜びと、散りあとの寂しさを、つねづね口にしていたわね。もしかして自ら亡きあとの、あの子のことまで思い巡らせていたのかしら。珍しく左注(さちゅう。歌の右に前書き、詞書きを添えるのに対して、歌の後に書く文言を言う)がある。全文引用すると-「思ひ絶えせぬ」と、亡き人の言ひけることを思ひ出でたるなりし。
¶木のもと=「木(こ)の下(もと)」と「子の許(もと)」を懸ける。
¶思ひ絶えせぬ=出所は『拾遺集』巻一春36、中務。(新潮版ほか)
咲けば散る咲かねば恋し山桜
思ひたえせぬ花のうへかな
□紫043:ちるはなを なげきしひとは このもとの
さびしきことや かねてしりけむ
□悠043:あのかたは さくらのちった さびしさに
のこされるこを かさねていたのね
あの方は桜の散った寂しさに
残される子を重ねていたのね 悠山人
○紫式部集、詠む。
○略注=詞書に、父が亡くなって家も荒れたけれど、桜は春を忘れずにやって来て、きれいな花を咲かせていますよ、との便り。そう言えば、彼、桜の咲く喜びと、散りあとの寂しさを、つねづね口にしていたわね。もしかして自ら亡きあとの、あの子のことまで思い巡らせていたのかしら。珍しく左注(さちゅう。歌の右に前書き、詞書きを添えるのに対して、歌の後に書く文言を言う)がある。全文引用すると-「思ひ絶えせぬ」と、亡き人の言ひけることを思ひ出でたるなりし。
¶木のもと=「木(こ)の下(もと)」と「子の許(もと)」を懸ける。
¶思ひ絶えせぬ=出所は『拾遺集』巻一春36、中務。(新潮版ほか)
咲けば散る咲かねば恋し山桜
思ひたえせぬ花のうへかな
□紫043:ちるはなを なげきしひとは このもとの
さびしきことや かねてしりけむ
□悠043:あのかたは さくらのちった さびしさに
のこされるこを かさねていたのね