オバマ演説 米英メディア論評 「正しい戦争」現実路線を好感
オスロでのノーベル平和賞授賞式で10日、オバマ米大統領が「平和は義務を必要としており、犠牲もともなう」とした演説は、米英メディア(電子版)にもおおむね好意的に受け止められている。核廃絶や恒久的平和などの理想論を羅列するだけでなく、あえて戦争の負の部分に踏み込んだことが、オバマ氏の現実路線と好感されたためだ。ただ、理念の現実化に動き出すべきとの意見もあり、オバマ氏はその真価を問われている。
「オバマ氏に批判的な陣営さえも奮い立たせた他の演説にオスロ演説は後れを取るが、その一方で、もっとも『大統領らしい演説』でもあった」
11日付の米紙ワシントン・ポストで、コラムニストのキャサリン・パーカー氏は、オバマ氏が演説で「正しさを信じ、困難な道を選択する指導者となった瞬間だった」と歓迎した。
オバマ氏はオスロ演説の冒頭で、人類が歩んだ戦争の歴史をひもといた上、平和賞の授賞式にはやや場違いな「正しい戦争」との概念も持ち出して、米国が抱えるアフガニスタンとイラクの戦争に理解を求めた。
こうした率直な姿勢を11日付の米紙ニューヨーク・タイムズ社説は「ノーベル賞委員会が聞きたかった(演説)内容かは疑問だが」としながらも、「戦争は極めて困難だが、必要でもあることには同感だ」と述べ、多国間主義と対話路線を基本にしたオバマ外交を肯定的に論じた。
一方、10日付の英紙ガーディアンは「オバマ大統領はオスロでノーベル平和賞を受け取りながら、アフガニスタンの紛争を拡大させ、悪を打ち負かすための『正しい戦争』を訴えるなど、矛盾した演説をした」と批判している。
10日付の英紙フィナンシャル・タイムズ社説もイランの核問題やロシアとの戦略核兵器削減交渉などの難題を念頭に「そろそろ物事が実際に動き始めねばならない」と苦言を呈し、11日付の英紙インディペンデント社説も「言葉だけでは何も解決しない」とオバマ氏に“有言実行”を強く促している。(犬塚陽介)