米国:医療改革法案、上院で可決 民主、結束優先で妥協
【ワシントン小松健一】米上院本会議が24日、医療保険制度改革法案を可決したことで、オバマ大統領は支持率低下傾向に歯止めをかけ、来年1月の大統領就任1周年に向けて政策遂行の弾みにする構えだ。一方で来年11月の中間選挙を控えて、民主党は上院の結束維持に苦慮し、下院法案との調整を難しくした。民主、共和両党の対立が決定的となり、オバマ政権と民主党は金融改革、気候変動対策など重要法案でも厳しい綱渡りを強いられそうだ。 「クリントン政権時代の失敗のトラウマ(心的外傷)」。議会関係者はオバマ政権の医療保険制度改革のアプローチをそう表現する。
94年当時のファーストレディーだったヒラリー・クリントン氏(現国務長官)が中心となって、ホワイトハウス主導で国民皆保険を目指す医療保険改革法案を策定した。しかし保険業界や医療団体、議会が「密室協議の産物」と反発、法案はお蔵入りになった。
オバマ政権は政権発足直後、当時の失敗を教訓に(1)議会指導部の意向を尊重する(2)保険業界や医療団体には大統領とホワイトハウスが説得する--などの方針を立てた。
法案策定を委ねられた民主党は上院の「60人ルール」に苦しんだ。上院定数は100で採決は過半数の多数決だが、議事妨害(フィリバスター)を防ぐ審議打ち切り動議には60人の賛成が必要だ。
民主党会派は無所属2人を含めてぎりぎりの60人。民主党指導部は下院案に近い公的保険制度を目指したが、60人の確保が難しく断念。他の案も無所属議員1人の反対でついえた。妥協を重ね続け、「60人ルール」のない下院法案との違いが目立つ結果となった。
CNNテレビの世論調査で医療保険改革法案への不支持は56%と依然として高いままだ。06年中間選挙以後、保守地域で躍進した民主党だが、下院民主党ではアラバマ州選出のグリフィス議員が22日、来年の中間選挙を見据えて共和党へのくら替えを発表した。
オバマ政権は気候変動対策なども医療保険改革と同様のアプローチで臨んでいる。共和党の協力が望めない状況では、中間選挙と世論動向、アフガン戦況をにらみ、スケジュールにさほど余裕はないのが実情だ。
◇真に意味のある改革実行のとき--オバマ大統領
オバマ米大統領は24日、上院での医療保険制度改革法案可決を受けて声明を発表し、「1世紀近い改革への戦いに終止符を打ち、真に意味のある改革を実行する時が来た」と述べ「歴史的な投票」だったことを強調した。
大統領は上下両院による法案一本化作業に言及し、両院の協力を求めた。