るり玉さんから頂いた種だと思うのですが。
オマケ。
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過去ログ。
高麗時代まで、社会の中心的役割を果たしてきた、両班制度は、朝鮮王朝時代に入り、農
業、商業の発達について行けなくなり、衰退していきます。
朝鮮王朝時代後期の実学者、朴趾源(1737~1805)は、時代について行けず、堕落して行く
両班達のみだらな生活を、擬人化した虎に痛切に批判させます。
ある村に、北郭先生と言う村人の尊敬を集めた両班の儒学者がいました。
彼は、隣村の五人の子持ちの美貌の未亡人に思いを寄せ、詩を教えてやると言って部屋に入
り込みます。
五人の子供達は、あんな偉い先生が、こんな事をするはずが無い。あれは、狐が化けている
に違いないと、部屋に押し入り、追い払います。
先生は、外に逃げ出して、家へ帰る途中、肥え溜めに落ちて、泣いている所を、虎に捕まっ
てしまいます。
先生は、虎に食われては大変と、泣いて哀願します。
「虎様、あなたの様な、徳の高いお方が、小生の様な汚い下品な体を食べたら、虎様の名誉
に関わります」
これを聞いた虎は、叱りつけながら言います。
「ソンビ(両班、儒学者など働かないで本ばかり読んで理屈をこねまわす輩の蔑称)と言う輩
は狡賢いと聞いているが、その通りだな。
いつもは、虎の悪口ばかり言っているくせに、立場が変わると、俺の前で、ぺこぺこする。
誰がお前の様な奴の言う事を信じるものか。
我々虎が、牛や、馬を殺して食うと言って、悪口ばかり言うが、虎は、食べ物に不平を言わ
ず、肉一切れだって残さずに食うのに、人間は、我々、動物達の食い物まで侵して飢え死に
させて居るではないか。
他人の物を盗む事を、泥棒と言うが、バッタの食糧や、カイコの着るものを奪い、蜂の甘い
蜜を盗み、アリの子供を塩漬けにして殺して食っているではないか。
お前たちは、わなを掘って捕まえるだけでは物足りず、網を作って鳥や魚を獲り、弓、鉄砲
を作って、動物を獲っているではないか。」
先生は、うつ伏せになってぺこぺこお辞儀をしながら、
「仮に悪い事をしでかした人間でも、反省をして、体を綺麗にすれば、上帝に仕える事もでき
ると言います。この様な、下品で可哀そうな人間を、どうぞ、許してやってください。」
先生は、息を潜めて、どの様な答えが返って来るか待っていました。
ふと、気がつくと、いつの間にか夜が明けて、虎は、消えていました。
周りには、野良仕事に出かける村人たちが取り囲んで、ぺこぺこしている先生を、不思議
そうに眺めていました。
「おや、先生、こんなに朝早く、何処に向かってお辞儀をなさっているのですか?」
先生は、周りを見回して、虎が居ないのを確かめると、平然として答えました。
「”天は高いから、仰ぎみなければならず、地は広いから、伏して見なければならない”と言う
諺がある。
私は、これを実践して見ただけだ。」