中国語の発音は、①スペル(a,b,c...またはㄅㄆㄇ...)と②声調(1~4声)の2つで構成される。日本人に中国語を教えていると、いつも皆さんスペルを覚えるのが早いなと感じる。おそらく長年カタカナで外国語の洪水と戦ってきた実力が反映されているからでしょう。だって、アスキタサンチン、サステナブル、メタボリックシンドローム...と、どんなに長い新語でも平気で飲み込んでいくもの。台湾人の私からすればもう名人芸そのもの。
しかし中国語を覚えるときも、どうもカタカナ語方式でスペル一本のみで突破しようと、片割れの声調を置き去りにする人が多い。確かに責められない一面はある。日本語の声調は、関東関西の橋・箸のアクセントが逆であることに象徴されるように、多くのときはあいまいで、しかも単独か複合かによってもまた異なる(例:春(はる⤵)、春(はる⤴)雨)。そのせいで、中国語もスペルがあっていれば大体通じるだろうと勝手に自分で大目に見る。
しかし、もし声調が「参考程度」のものなら、そもそも存在する価値がなくない?現存し使われているということは、発音に欠かせない要素だから。そこはちゃんと認識しなければならない。
中国語のスペルはざっと400種類、声調は4種類(軽声除く)。それぞれ一つ間違えて穴をあけたと想像してみて。同じ面積で開いた1/400の大きさの穴と1/4の大きさの穴、どっちのほうが目立つか。そう、スペルの失敗は小さく目立たないが、声調の失敗は大きく目立つものだ。声調よりスペルのほうが重要と考えてきたそこのあなた、今すぐ考えを改めることを勧める。
中国語は日本語と違って、長短音(「しょう」と「しょ」のような)の違いもないし、促音と濁音の存在もない。馴染みのないものはつい適当に扱うのは、中国語ネイティブだって同じ。中国語ネイティブの「こうしょう、こしょう、こうしょ、こしょ」、「かこう、かごう、かっこう、がっこう、かこ、かご」、「パット、パッド、バット」などの発音が微妙...という場合がよくある。想像してみてほしい。「うわっ、いま言ったの、どれだ?」を当てながら会話するのって、つらくない?私なら、多分5分が限界。
人の振り見て我が振り直せ。自分の声調が同じように、会話のじゃまになっていないか、思う節があるようなら、ぜひいま一度見つめなおしてほしい。
私なんか、実は恥ずかしながら、今日この瞬間まで、ずっと「つづり」のことを「スベル」と思い込んでいた。今回記事を書くにあたり、入力がうまく行かず、「滑る」とか「スベる」しか変換されないことで、ようやく自分が「スベっていた」ことが判明。考えれば英語はspellだものね。あ〜あ、はずかしい!今までお聞き苦しい日本語で、多大なご迷惑をおかけしてきたこと、この場を借りてお詫びを申し上げます。
もとい。日本人にとって「n/ng」「f/h」「jiqixi/zhichishi/zicisi」のような何年やっても克服しづらい苦手なスペルはいろいろある。しかし声調は4種類しかない。正しい方法で練習すれば、だれでもきれいに身につくはずだ。やり方はこうだ。
①1~4声の順に「1高高、2低高、3低低、4高低」とイメージを単純化する
②一文字一文字読み進める
教室で使っている声調を表すマグネットだ。これを思い浮かべながらイメージトレーニングすればよい。
たったこれだけのことだ。一文字ずつ読めば、声が耳にとどまりやすく、つまり正しいかどうか自分でジャッジしやすい。「n/ng」「f/h」「jiqixi/zhichishi/zicisi」は自力ではなかなかジャッジできないが、「1高高、2低高、3低低、4高低」の単純な4タイプだから、わりと自力でもちゃんとできる。自力で声調を整えられることは、自立において大きな一歩。
声調の失敗のあるある第一位は、「無意識に前後の字の高さに引っ張られる」。一文字ずつ読み上げることは、そういう欲張りによる失敗が防げる。一文字ずつ読み、前後の高さに引っ張られなくなれば、次は徐々にスピードアップを目指す。ただ、気を抜かすとまた前後に引っ張られてしまうので、必ず自分の発した声を思い出せるようにしながら練習に臨むこと。
中国語を習えば習うほど、発音がどんどん悪くなるという不思議現象に陥る方は、意外と多い。しかも、スペルよりも声調がダメというのが特徴。幼児じゃあるまいしといわずに、一度「4つの音しか出ない鍵盤」を指差し確認で押しながら、初心に立ち返って中国語を奏でてみては?一つ一つ正確に弾けるようになったら、いつか流れるような美しいメロディーを奏でられるようになることでしょう。
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