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動物たちの反乱 増えすぎるシカ、人里へ出るクマ

2010年06月02日 20時21分47秒 | 
近年、中山間地で大問題となっている野生動物による農業被害。動物による農業被害は昔からありましたが、最近の状況は人と自然との関わり合いが変化してきたのが原因であり、「まち」に住む多くの人たちとも決して無関係な問題ではありません。

 動物たちの反乱  増えすぎるシカ、人里へ出るクマ
 PHPサイエンス・ワールド新書 河合雅雄・林良博 編著
    

『兵庫県は野生動物に関わる諸問題を解決するために、平成19年、兵庫県森林動物研究センターを設立した。研究員6名、専門員5名が中心となり、着々と実効をあげている。その活動体験の中で感じたのは、実被害ばかりが取り上げられ、なぜこうなったのか、現状にいかに対処すべきか、また、将来どうあるべきかについては、ほとんどの人が何もわかっていないということだった。そして、困っているのは農村部の人たちだけで、多くの都会の人は関心が薄いというのが実情である。
 これらの諸問題について、センターの研究員が分担執筆したのが本書である。』
(「まえがきにかえて」より)

動物たちが“反乱”を起こした理由について、本書では次のようにまとめています。
 ①里やまの崩壊
 ②動物の数が増えた
 ③農村の構造的変化
 ④野生動物の保護管理行政(ワイルドライフ・マネジメント)の貧困
これについては、まったく同感です。だから、動物による農業被害は「農業」や「農村」だけの問題ではないわけです。

目次を見れば分かるように、この本では被害や対策の現状から、ワイルドライフマネジメントの考え方、さらには地域住民の被害認識の分析や日本人の動物観の変遷にまで触れられています。
野生生物について総合的に考える入門として良い本です。ただ、読者がより知識を深めたい場合の参考としたり、具体的なデータを知りたい場合の参考となるように、主要な引用文献や参考文献が掲載してあれば、さらによかったなと思います。


目次
・第一章  野生動物の反乱 
・第二章  里山とは何か 
・第三章  ワイルドライフ・マネジメント 
・第四章  ニホンザルの被害はなぜ起こるのか 
・第五章  シカと向き合う 
・第六章  ツキノワグマ ~絶滅の危機からの脱却 
・第七章  イノシシ ~人の餌付けが悲劇を生む 
・第八章  外来生物 アライグマとヌートリア 
・第九章  野生動物管理と獣医学
・第十章  森林から野生動物との共存を考える 
・第十一章 獣害と地域住民の被害認識 
・第十二章 日本人の動物観 
・第十三章 倫理面から見たワイルドライフ・マネジメント


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2 コメント

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Unknown (くま)
2010-06-03 00:51:30
良い一冊ですよね!
私も少し前に読み、色々と勉強させていただきました。

それにしても、編著者の河合先生は立派なお仕事をなさっていらっしゃいますね。
自らがきちんと露払いを務めながら、若手に研究成果の発表の場を準備していらっしゃいます。

ともすれば、若手の成果を自分の名前で出版するような「大御所」たちも少なくない中で、本当に立派なお仕事だと思います。
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くま先生へ (こにタン)
2010-06-03 21:11:35
野生動物問題に関して私の感じていたいくつかの疑問について、
この本を読んで解決できました。

群馬県にも、野生動物を総合的に扱う部署があれば良いのにと思います。
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