日本の豊かな自然を特徴づけているのは、国土の約67%を占める森林と、伝統的農業によって形成された里地里山です。
しかし、近年は過疎化、高齢化によって農山村が疲弊し、この地域の生物多様性が危機にさらされています。
この事態を打開するには、農山村を元気にしなければならない。そしてそのためには、都市住民の協力と公的な支援が必要・・・ と思っていたのですが、冷静に考えてみると、事態はそう簡単ではありません。
日本はすでに人口減少期に入っています。農山村だけでなく、日本全体の人口が減っていきます。人口が減るということは、国や自治体の収入も減るということ。さらに高齢化により社会保障費は増える一方・・・。
豊かな自然(二次的自然)を守ってきた農山村への支援は期待できない・・・。「無い袖は振れぬ」という状況が迫っています。
では、どうすればよいのか?
という問いに答えているのが、この本↓
撤退の農村計画 過疎地域からはじまる戦略的再編 林直樹、齋藤晋・編 学芸出版社
この本を読んで、目から鱗が落ちました。う~ん、そういう考え方があったか!と・・・。
著者らは現在起こっている農山村の集落の自然消滅(消極的な撤退)に対して、山あいの集落が丸ごと平場へ集団移転する「積極的な撤退」を提唱しています。
『撤退』というと、負けて去るというマイナスのイメージを受けますが、そうではなく、「計画的に力を温存してチャンスを待つ」、「少し引いて、守るべきところは確実に守る」という“戦略”です。
山村から人がいなくなってしまうと、森の恵みを利用し、自然とともに生きていく文化(技術)が失われてしまうので、“体力のある”集落は、その場にとどまり、自然と共生する文化(技術)を継承する「種火集落」も必要であると述べられています。種火集落は、将来、エネルギー危機、食糧危機が起こった時には、即座に生きるための技術を周辺に広めるという役割を担います。
詳細については、是非、この本を読んでいただきたいと思いますが、人口減少期に入った日本で、山村と二次的自然を守るためには、この方向がベストなのではないかと思います。
ただ、現実に「戦略的撤退」を実現させるには、大小様々な問題が発生するでしょう。国レベル、地方自治体レベルでの議論と人材育成が必要だと思います。
目次
第1章 過疎集落の現状
第2章 予想される国の将来
第3章 すべてを守りきることができるか
第4章 積極的な撤退と集落移転
第5章 積極的な撤退のラフスケッチ—生活編
第6章 積極的な撤退のラフスケッチ—土地編
第7章 積極的な撤退と地域の持続性
共同研究会「撤退の農村計画」のWebサイト
しかし、近年は過疎化、高齢化によって農山村が疲弊し、この地域の生物多様性が危機にさらされています。
この事態を打開するには、農山村を元気にしなければならない。そしてそのためには、都市住民の協力と公的な支援が必要・・・ と思っていたのですが、冷静に考えてみると、事態はそう簡単ではありません。
日本はすでに人口減少期に入っています。農山村だけでなく、日本全体の人口が減っていきます。人口が減るということは、国や自治体の収入も減るということ。さらに高齢化により社会保障費は増える一方・・・。
豊かな自然(二次的自然)を守ってきた農山村への支援は期待できない・・・。「無い袖は振れぬ」という状況が迫っています。
では、どうすればよいのか?
という問いに答えているのが、この本↓
撤退の農村計画 過疎地域からはじまる戦略的再編 林直樹、齋藤晋・編 学芸出版社
この本を読んで、目から鱗が落ちました。う~ん、そういう考え方があったか!と・・・。
著者らは現在起こっている農山村の集落の自然消滅(消極的な撤退)に対して、山あいの集落が丸ごと平場へ集団移転する「積極的な撤退」を提唱しています。
『撤退』というと、負けて去るというマイナスのイメージを受けますが、そうではなく、「計画的に力を温存してチャンスを待つ」、「少し引いて、守るべきところは確実に守る」という“戦略”です。
山村から人がいなくなってしまうと、森の恵みを利用し、自然とともに生きていく文化(技術)が失われてしまうので、“体力のある”集落は、その場にとどまり、自然と共生する文化(技術)を継承する「種火集落」も必要であると述べられています。種火集落は、将来、エネルギー危機、食糧危機が起こった時には、即座に生きるための技術を周辺に広めるという役割を担います。
詳細については、是非、この本を読んでいただきたいと思いますが、人口減少期に入った日本で、山村と二次的自然を守るためには、この方向がベストなのではないかと思います。
ただ、現実に「戦略的撤退」を実現させるには、大小様々な問題が発生するでしょう。国レベル、地方自治体レベルでの議論と人材育成が必要だと思います。
目次
第1章 過疎集落の現状
第2章 予想される国の将来
第3章 すべてを守りきることができるか
第4章 積極的な撤退と集落移転
第5章 積極的な撤退のラフスケッチ—生活編
第6章 積極的な撤退のラフスケッチ—土地編
第7章 積極的な撤退と地域の持続性
共同研究会「撤退の農村計画」のWebサイト
これは都市化についても同じだと思います。
近年開発がどんどん進んでますけど、
人口減少社会に入っている日本、
「そんなに開発してどうなるの?」って思っちゃいます。
今の土地や産業を維持する=「守る」ことも大事なんじゃないかなあ~。
…偉そうなこと言っちゃいました☆
現実は、ナカナカ厳しいですよね(^^;
これまでの考え方ではやっていけなくなりますよね。
考え方を変えていかないと・・・
現状を科学的に分析して、冷静に考えれば、
撤退の農村計画に参画している研究者の皆さんの提案はもっともなんですよね。
問題を先送りにせずに、広く議論を起こすべき時ですね。
う~ん、恐ろしいですね。
でも、確かにあり得ない話ではない・・・
私も生物多様性保全に関して、このブログなどで発信をできればと考えています。
また、現に、中山間地域に住んでいる方々の意見も知りたいです。
都市部のかたが「農村を大切に思わなくなった」ではなく、「都市部も余裕がなくなった」ということでしょう。なんとも大変な時代になりました。
そういえば、3日の衆院本会議で「生物多様性保全のための活動促進法(里地里山法)」が成立しましたね。気になります。
山村で起こっている様々な問題は、決してその地域だけの問題ではなく
国民すべてに関わることだと思うんですけどね・・・。
里地里山法、全会一致で可決成立したようですが、
新聞には今国会で成立した法律一覧のような感じで名前だけしか書かれていませんでしたね。
次の生物多様性国家戦略には、「積極的な撤退」の思想も取り入れたグランドデザインが描かれることを期待したいのですが・・・
人口減少時代のグランドデザインには、新しい思想も必要。「積極的な撤退」はそのひとつだと思っています。本書は「たたき台」なので、みなさんで(建設的に)がんがんたたいてもらえるとうれしいです。
すべてを守るのではなく、「選択と集中」ということですが、
“守るべきところ”を選択する作業には、かなり難しい作業になるのだろうなぁと感じます。
(日本は民主主義なので・・・)
自然に対する人の働きかけで形成された二次的自然の維持には、伝統的な「農」の営みが不可欠ですが、それがそこそこ“儲かる”仕組みづくりも必要かと・・・。山村の“智慧”が消えないように。
“種火”になれる集落が残っているうちに動き出さないと、大変なことになるのはと心配です。