幼稚園から小学校へ上がった頃かな。近所の自転車屋さんで自転車を買いました。
その時、どういう理由だったか忘れましたが、取り置きをしてもらってたんですね。
そして約束の日に、母と「今日だね~」と楽しみにして自転車屋へ行ったら、その自転車を売ってしまったと言うんです。
取り置きしてるのにですよ。
その当時、隣近所はみんな知り合いみたいな狭い町に住んでいましたら、同級生の妹がどうしても欲しいと言ったので売ってしまったということなんです。
それってどういうこと?家の母が凄い怒ったんだけど、とりあずもう1週間待てば新しい自転車が来るからそれで勘弁してくださいって感じに話が進んでいったんですね。
でも私としてはね。
もうケチガついたようなものなんですよ。
まして同級生の子の妹と同じなわけじゃない。
ピンクの女の子らしい自転車だったんだけど、もう今日買うって決めてたし、じゃ、今あるものの中から選びますって選んだ。
男の子が乗るような白に黒い星の散らばった自転車にしました。
母は怒ってましたけど、私はそれでも十分いいやって気分でした。
そのあと、引越しをするのですね。
その自転車を持って。
たまたまある晩、夜中に近所で火事が起きたんですね。ぼやでたいしたことがなかったらしいんですが、翌日起きた私には大変なことが待っていました。
自転車が消えてる。
昔のことだから、家の前に置いてるくらいで、特に鍵とかかけてないんですね。
多分、前日の火事騒ぎで、野次馬に来た人がもって行っちゃったんだろうな、母がそう言いました。
とても悲しくて落ち込んでたんです。
どこかで乗り捨てられてる自転車、持っていくなんてひどい。
そこへ1人の少女が話しかけてきました。私より上級生、5年生くらいの感じかな。ほんの目の先のマンションに住んでる子です。学校だって同じでしょう。
そこの子が突然言うのです。
「あなたの自転車と似てるけど、あれ私の自転車だからね」
最初はなにを言ってるのか判らなかった。
その子にマンションの駐輪場へ連れて行かれ、意味がやっと判りました。
そこにあるのはどう考えても私がピンクの女の子らしい自転車の代わりに手に入れた白地に黒い星の自転車だったからです。
4、5つも上の子だから、何も言えなくてその場は帰ったんですが、家に帰って母に言ったんですね。
母もそれはおかしい抗議に行こうみたいな話をしていたら、さっきの子とお母さんが訪ねてきました。
「娘が申し訳ないことをしたそうで」
と、自転車を返してくれました。
あの自転車とはどれほど付き合ったのかな。
今はもう覚えてないけど…人に気に入った自転車をとられ、また新しく見つけたらそれもとられ…。
何であの子、わざわざ私にあんなこと言ったのかしら?言わなければ当分気づくことは無かっただろう。
罪の意識ってことだったのかな。
とにかく私の自転車選びは不思議な運命を辿った。あれ以来自分専用の自転車はもったことがない。
『まやかし嬢』
楽天からご購入いただけます。
↓
http://books.rakuten.co.jp/rb/%E3%81%BE%E3%82%84%E3%81%8B%E3%81%97%E5%AC%A2-%E7%9F%B3%E5%B7%9D%E6%B4%8B%E5%AD%90-9784779004605/item/6281811/
その時、どういう理由だったか忘れましたが、取り置きをしてもらってたんですね。
そして約束の日に、母と「今日だね~」と楽しみにして自転車屋へ行ったら、その自転車を売ってしまったと言うんです。
取り置きしてるのにですよ。
その当時、隣近所はみんな知り合いみたいな狭い町に住んでいましたら、同級生の妹がどうしても欲しいと言ったので売ってしまったということなんです。
それってどういうこと?家の母が凄い怒ったんだけど、とりあずもう1週間待てば新しい自転車が来るからそれで勘弁してくださいって感じに話が進んでいったんですね。
でも私としてはね。
もうケチガついたようなものなんですよ。
まして同級生の子の妹と同じなわけじゃない。
ピンクの女の子らしい自転車だったんだけど、もう今日買うって決めてたし、じゃ、今あるものの中から選びますって選んだ。
男の子が乗るような白に黒い星の散らばった自転車にしました。
母は怒ってましたけど、私はそれでも十分いいやって気分でした。
そのあと、引越しをするのですね。
その自転車を持って。
たまたまある晩、夜中に近所で火事が起きたんですね。ぼやでたいしたことがなかったらしいんですが、翌日起きた私には大変なことが待っていました。
自転車が消えてる。
昔のことだから、家の前に置いてるくらいで、特に鍵とかかけてないんですね。
多分、前日の火事騒ぎで、野次馬に来た人がもって行っちゃったんだろうな、母がそう言いました。
とても悲しくて落ち込んでたんです。
どこかで乗り捨てられてる自転車、持っていくなんてひどい。
そこへ1人の少女が話しかけてきました。私より上級生、5年生くらいの感じかな。ほんの目の先のマンションに住んでる子です。学校だって同じでしょう。
そこの子が突然言うのです。
「あなたの自転車と似てるけど、あれ私の自転車だからね」
最初はなにを言ってるのか判らなかった。
その子にマンションの駐輪場へ連れて行かれ、意味がやっと判りました。
そこにあるのはどう考えても私がピンクの女の子らしい自転車の代わりに手に入れた白地に黒い星の自転車だったからです。
4、5つも上の子だから、何も言えなくてその場は帰ったんですが、家に帰って母に言ったんですね。
母もそれはおかしい抗議に行こうみたいな話をしていたら、さっきの子とお母さんが訪ねてきました。
「娘が申し訳ないことをしたそうで」
と、自転車を返してくれました。
あの自転車とはどれほど付き合ったのかな。
今はもう覚えてないけど…人に気に入った自転車をとられ、また新しく見つけたらそれもとられ…。
何であの子、わざわざ私にあんなこと言ったのかしら?言わなければ当分気づくことは無かっただろう。
罪の意識ってことだったのかな。
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