1876年の作品ですが、登場人物が「あざみちゃんってバカなの?」というように途中までは「?」って話だ。
香川あざみは半年前に出会ってすぐに同棲した早川裕二(多分この字か?)の家があまりに殺風景なことから家財道具をローンで買い、子どもを身ごもる。
彼女はその子をゆうちゃんの子だからと意地になって産み、紀(のり)と名付ける。世間には子どもがいることは近所や友達以外には内緒だ。
下北沢のアパートに住み、裕二の親友のしゅうちゃんとその彼女で仲がいい杉本きみ子と、紀を預かってもらう老夫婦の横川甚九郎夫婦と慎ましく暮らしている。
が、自分が娘・紀(のり)が2歳を迎える頃、再生不良性貧血で余命が1年あまりということが判る。
主治医の御手洗は、紀(のり)を子どものできない夫婦の元へ養女に出すよう手はずを整え、その方がいいと1回納得するが、彼女の病気を知らず、結婚したいと望むモデルハウスに共に勤めている会社の同僚・恂平に九州に転勤するから着いてきてほしいと、子どもも引き取ると言い出す。
そして、紀を養女に出した先から誘拐同然に連れ帰る。
あざみもその気になるが、御手洗が相手にあざみの病状を話したところ、恂平は1人で転勤していった。
1度手放した娘をもう離せず、紀のために父親を残そうと始める。
ここら辺が…たかが半年、1年一緒に暮らした女の連れ子を育ててくれる男なんぞいないんじゃない?ってツッコミたくなる。
あざみが亡くなったら、困って施設に入れるのが関の山、このまま養女に出した方が…と思うんだけど。
しかし、次から次へ父親候補を見つけていき、彼女の周りの男たちもあざみを愛している。
しかし、みんな事情を抱えていて、調子のいい見栄っ張りな言葉に乗せられプロポーズをされるが最後はあざみを裏切る結果になる。
妻に逃げられ戻って来た妻を刺してしまった区役所に勤めるえ真面目な岩崎、ヌード写真の撮影の仕事を紹介した敬太、山で一夜限りと思った娘を抱いて追いかかけてこられた同僚の洋介は1度はあざみに頼んで追い払うことを考えるが、自分にはああいう娘が似合いだと気付いてしまう。あざみとデートをして襲おうとしてクビになった蕎麦屋の修、クスリを扱っている怪しげな白浜は殺され、そうして1人ずつ去っていった。
本当の父親だって、子どもができたと聞いたときおろせと言った。もうあざみに飽きていて、あざみの親友のきみ子に一緒にアメリカへ行こうと言っていた始末だ。
男運がないというか…。
そしてどうしても子どもをおろすのは嫌だというあざみを追いかけて行った裕二は成り金の息子・渡辺に車に撥ねられ亡くなる。
あざみは、当時としてはきついシングルマザーの道を歩み始める。
けれど、そんな男たちをあざみは恨まず、元気つける。しかし罪の意識を拭えない渡辺の気持ちだけは受け入れられない。
その前向きな姿勢は死を前にした人間の覚悟なのか、あざみ本来の性格なのか。馬鹿を通り越して天使のように見えてくる。
周りの男たちがいい加減過ぎるんだなと思うようになった。
昼はOLをし当時としては始まったばかりのコインランドリーの店番とそれでも11万しかもらえない。
回りも再婚したら?と言い始めるが、彼女の病気はどんどん重くなっていた。
きみ子は渡辺と気があい、ハワイへ出かける。もう終わりだと悟ったしゅうちゃんはコインロッカーの仕事を辞め、パブでシンガ―の仕事を始めるという。
横川夫婦は九州の老人ホームの話へ入る話が出ていたが、あざみは紀と4人で郊外で店をやりながら暮らそうとするが、肝心の店を借りる資金はない。貸してくれる人もいない。
昼間のモデルハウスの所長に頼むと半年あざみの青春を買うという約束で残りの金を出してもらうことになっていたが、妻にバレてしまう。
甚九郎の妻は人が置き忘れた財布に手を付け、警察沙汰になり夫妻は老人ホームに行く覚悟を決め去っていった。
御手洗は事情で医院を閉めてしまったがあざみを最後の患者として診ていた。
彼の娘もあざみと同じ病気で、それを苦にした妻が殺してしまったからだった。
もう1度、紀を養女にという御手洗の言葉があざみはどうしても聞けなかった。
そしてついに病気があざみの身体をむしばみ、そのときが近づいていた。
あざみは御手洗のいうことを聞いて御手洗の病院に入院することになった。
別れることになったしゅうちゃんときみ子、きみ子は何故、御手洗の元へあざみが越すのか判らない。あざみが病気を周囲に隠しているからだ。
あざみはうまくすれば御手洗が紀のパパになってくれるかもしれないと期待する。
しゅうちゃんは紀とあざみと暮らさないかという。
あざみは同情してくれているのだと思い、3歳の紀の3歳のバースディ―パーティーには来てくれという。
そんな中、あざみの病状は悪化していった。
モデルハウスの所長は妻子を捨て、あざみと結婚することに勝手に決めていた。
夜中に御手洗の部屋を訪ね、紀の父はいいから抱いてほしいというあざみに、御手洗は妻が子どもの病気のせいで無理心中を図り、6年の刑を受けた。それを待っていると告げた。
そして、パーティーの当日、御手洗の妻が仮出所になって、戻って来ると連絡があった。立川まで迎えに行く御手洗、パーティーに誰も来てくれないから、あざみはケーキすら受け取りにいけない。
しゅうちゃんは仕事で来れず、きみ子は渋る渡辺を誘うが、やはり母子の父親を殺してしまったからいけないと躊躇し、逃げるから門の前までいっても中に入れない。
誰も来ないし、バースディ―ケーキもないし、あざみは紀を1人残してバースディ―ケーキを1人取りに行った。
しかし、その帰り、おざみば倒れる。そこへ冷たい雨が降って来た。
あざみは紀の呼ぶ声の幻聴に導かれいつか夢で見た古い教会に十字架が倒れている風景の中に倒れ込む。
そのそばを猫が横切っていく。
「寒いわ…誰か、読んで来て…」
呟くあざみはもう起き上がることもできない。
1人家で待つ紀は雨の中に出て、ママの名を呼んだ―――。
あざみの葬儀はモデルハウスの上司、同僚、御手洗、しゅうちゃん、きみ子…と7人だけが出席した。
残された紀はどうしてもという渡辺の希望を入れて、とりあえず渡辺に引き取られることになった。
御手洗は妻との生活に戻り、あざみのことを診察室で思い出した。
きみ子はしゅうちゃんの子を宿し、子どもを産むと戻って来た。そして子どもに「あざみ」とつけたいという。
しゅうちゃんもそれには賛成だった。
渡辺はいつも紀とあざみが渡っていた電車の遮断機をケーキを持ち、あざみの代わりに紀と共に歩いて行った――――。
ときたま出てくる、マザーグースの詩、誰にでも心から愛し接したあざみ、しかし最期は1人で逝った。
最期は誰でも1人だ…。
今、これを演じた当時の坂口さんと同じ年くらいになった娘さんの気持ちが何故か1番聞いてみたくなるようなドラマだった。
1番胸にくるのはお嬢さんだろう。