大坂水曜ほっと集談会一世です。
森田療法のことを逆説の精神療法と呼ばれている方がある。
面白い表現だと思う。
確かに世界で唯一治すことを目的としない精神療法が森田である。
さてこの森田療法を読み解くキーワードがいくつかある。
理論的には感情の法則や精神交互作用などが有名である。
私はどちらかというと理論用語より思想の矛盾や純なる心という森田博士の独特の言い回しが好きである。
さて話は飛躍するが以前から私は森田療法の隠れたキーワードとして東洋思想の「他力」という考え方があると思っている。
他力というと、とてもネガティブで人任せというような誤った考え方がある。
しかし本当の他力とは自分の限界を思い知った人間だけが到達できる心の世界ではないかと私は思っている。
この度卒寿を迎えられた作家の五木寛之氏はこの他力思想について、他力は自力の母であるという表現をされています。
また他力についてわかりやすい例えとしてエンジンのついてないヨットと風の関係に例えておられます。
他力という風をはじめからあてにするのではなく、普段からコツコツと充分準備をして他力の風が吹くことを待つのです。
僭越ですが私にも60年の人生の中でどうにもこうにもならない、頑張っても頑張っても努力してもどうにもならない時期がありました。
ともすれば絶望しすべてを投げ捨ててしまいたいという衝動に駆られたこともあります。
そんなどうにもならない日々の中で雲の切れ間から太陽の光が射し込むように、突然局面が変わり希望が湧いてきたことがありました。
今日の森田博士の言葉
外形から治してゆくのを「他力の法」とすれば自分で会得しようとするのは「自力の法」と言えます。
ところが「自力」で悟りを開くのはなかなかむずかしく「他力の法」ではわずか40日で治るものが、自力の法では五年、十年かかっても治ると保証できないのであります。
私たちはとらわれてとらわれてどうしようもない自分と向き合うことを余儀なくされたはずである。
にも関わらず何十年と森田を学んでも、未だに他人や自分の人生を理屈でコントロールしようとする人がいる。
自分も含めて、誠に残念で仕方がない。
2023.9.5 一世