ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#185

2019-06-07 12:00:14 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第185話『虹』(1976.1.30.OA/脚本=小川 英&加賀美しげ子/監督=竹林 進)

後にゴリさん(竜 雷太)の婚約者=麻生晴子を演じることになる、水沢アキさんの初ゲスト回。

交通事故により死亡した男が、手配中の強盗犯らしいことが判明。その車の同乗者で入院中の女性と面会した殿下(小野寺 昭)は、どこかで彼女と会ってた気がするんだけど思い出せない。

その女性も、事故のショックで記憶喪失状態にあり、死んだ男が本当に強盗犯なのか確かめるすべがない。

そんな時、新聞の報道を見た彼女の幼なじみ=ヒロシ(大和田 獏)が登場し、彼女は山形県から歌手を目指して上京した加代(水沢アキ)であることが判明します。

ヒロシは、強盗を犯すような男と加代が関わり、酷い目に遭ったのは「あんたのせいだ」と殿下を責めます。彼女からの手紙で、ヒロシは殿下のことを知っていた。

殿下はやはり、3年前に加代と出逢ってた。鉄橋で雨に打たれながら東北行きの電車を見つめる加代を、たまたま見かけて放っておけなかった殿下は、声を掛け、最寄り駅まで送ってあげたのでした。

色んな事がうまく行かず落ち込んでた加代は、故郷の山形に帰ろうと考えてたけど、イケメン殿下に励まされ、もうちょっと頑張ってみようと思い直した。

そんな彼女が殿下との別れ際に見たのが、雨上がりの東京に架かった、美しい虹。

「東京の空にだって虹は架かるんだ。辛いこともあるだろうけど、一生懸命頑張るんだ」

行きずりに出逢ったイケメン刑事の無責任な言葉で、無理して東京に残った挙げ句、加代はこんな目に遭ったワケです。

ほんと、イケメンって奴はろくな事をしませんw 何もかも殿下のせいです。理由は、イケメンだからです。

しかし、加代は本当に記憶を失っているのか? '70年代のドラマ世界じゃ日常茶飯事だった記憶喪失。自身も過去にやらかしており(#143『霧の旅』)、その経験から不自然さを覚えた殿下は、彼女を問い詰めます。

「君は本当に忘れてしまったのか? 歌も、あの時の虹も、みんな忘れてしまったのか!?」

「違うわ! 忘れてなんかいない。島さんの顔、ただの一度も忘れた事はなかった!」

やはり偽装だった記憶喪失。交通事故は、一緒にいた強盗犯がさらに殺人を犯そうとするのを、加代が止めようとして揉み合ったのが原因だった。殿下のせいです。

加代はその罪を隠したかったというより、自分がそんな人生を歩んでしまった事実を、殿下に知られたくなかったんでしょう。殿下のせいです。

とりあえず強盗事件は片付き、例によってボス(石原裕次郎)の尽力で加代は不起訴となり、ヒロシと一緒に帰郷して出直すって事で、一応のハッピーエンド。

だけど、殿下の優しさ、頑張れという励ましが、1人の少女を追い詰めた事実は変わりません。殿下のせいです。

こうしてお節介が仇になっちゃうパターンは『太陽にほえろ!』の十八番の1つで、特に殿下と長さん(下川辰平)の主役回に多かった気がします。長さんの場合も、たぶん殿下のせいです。

それでも我々は、他者のことを想い、失敗を恐れず他者と関わって行くべきなんだ。情けは人の為ならず。

そういうメッセージだろうとは思うけど、今回のエピソードではイマイチ伝わって来なかったです。ボスの根回しでアッサリ解決っていうのも、まぁいつものパターンとは言えw、ご都合主義と言われても仕方ありません。

水沢アキさん(当時21歳)も泣いたり喚いたりの芝居ばっかで、魅力が発揮されたとは言い難い。それも殿下のせい、でなければマイコンの責任です。理由はダサいからです。

大和田獏さんは当時25歳。『太陽』は第117話『父と子の再会』以来2度目のゲスト出演で、後の第252話『鮫島結婚相談所』にも登場されます。

獏さんもアキさんもNHK『連想ゲーム』のレギュラー解答者(アキさんは紅組キャプテンも歴任)だったけど出演時期は入れ違いで、獏さんは紅組解答者の岡江久美子さんと結婚。

ちなみにアキさんの次に紅組キャプテンを務めたのが、殿下の妹=京子役の中田喜子さん。そして獏さんの前任解答者がスコッチ=沖 雅也さんだったり等、何かと『太陽』に縁のあるクイズ番組でした。
 
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『太陽にほえろ!』#182

2019-06-07 00:00:09 | 刑事ドラマ'70年代





 
☆第182話『ボディガード』

(1976.1.9.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=山本迪夫)

全国捜査係長会議(そんな会議あるの?w)に出席するため、箱根を訪れたボス(石原裕次郎)を、地元・南署の美人婦警=今井京子(ビーバー)が出迎えます。

ところが、ボスを乗せて会場に向かう途中で京子のクルマが制御不可能となり、危うく大事故に。彼女の機転で助かったものの、あらかじめブレーキに細工が施されてた事が判明します。

ボスと旧知の仲で、京子の叔父でもある南署の庄司係長(山内 明)は、生命を狙われたのはボスではなく、京子かも知れないと睨みます。

1年前に事故死したとされる庄司係長の兄、すなわち京子の父親は元刑事で、警察内部の汚職を密かに捜査していた。もしかすると彼は、事故に見せかけて暗殺された可能性もあり、その犯人一味が娘の京子をも消そうとしてるのかも知れない。

庄司係長は、しばらく京子の身柄を預かって欲しいとボスに懇願します。

捜査課の刑事を志望する京子は、庄司係長からボスのボディガードを命じられ、実は自分がガードされてるとも知らずに張り切ります。

普通なら、そのネタは後でバラす=どんでん返しとして使うところだけど、それよりもキャラクター描写を優先するのが『太陽』作劇なんですよね。

部下が上司を恨んでの殺人も多いからと、七曲署メンバー達のアリバイを調べ、アッコ(木村理恵)の入れたお茶までチェックする京子の徹底ぶりに、ボスも苦笑いw

さらに京子はボスのマンションに押しかけ、泊まり込みのガードを敢行。じゃじゃ馬で色気がない京子の替わりに、ボスがシャワー姿をサービスしてくれますがw、そのスキを狙って殺し屋が部屋を襲撃!

サイレンサー付きの拳銃で狙ってくる殺し屋を、脱衣場に置いたホルスターから素早く銃を抜き、1発で射殺しちゃうボス。まるで『007』みたいにスピーディーかつクールなアクション描写に、私はシビれました。

負傷し、狙われてたのが自分である、つまりボスをガードしてるつもりがガードされてた事実を知り、ショックを受ける京子。

さらに、犯人一味が京子を狙う理由が、実は京子が彼らを恐喝して金を搾り取っていたから、という新たな疑惑が浮上、その証拠となる振込通知書まで発見されちゃいます。

「違います! わたし、恐喝なんかしてません! 信じて下さい、藤堂係長!」

涙ながらに訴える京子を、地元警察まで連行するよう、テキサス(勝野 洋)とボン(宮内 淳)に指示するボス。

京子は、賭けに出ます。惚れっぽいボンをうまく騙しw、途中で脱走した彼女は、真犯人と思われる同僚かつフィアンセの中井刑事(西田 健)を呼び出し、二人で箱根のロープウェイに乗り込みます。わざと自分のハイヒール(つまり痕跡)を乗り場に残して……

密室の中で、中井に疑惑をぶつける京子。もし彼が真犯人なら、京子を消す絶好のチャンス。西田健さんが演じてる以上、狙ってくるに決まってますw

案の定、本性を現した中井は京子に拳銃を向けます。ところが、ロープウェイの終着駅でボスが待ち構えていた!

こうなる事を予測して動かなければ、間に合うワケがありません。つまりボスは最初から、京子の潔白を信じてたんですね。

「どけ! どかないとこの女を撃つぞ!」

……って、言い終わらない内に中井は眉間を撃ち抜かれ、あっけなく昇天しちゃいます。

通常『太陽にほえろ!』における犯人射殺は、言わば「掟破り」の一大事なんだけど、ボスだけは結構あっさり殺しちゃう。今回は2人もあの世に送っちゃいました。

それが許される理由はもちろん、ボスだからです。そして脚本が残酷大将だからです。

「無茶な事をする……もし私が間に合わなかったら、どうするつもりだったんだ」

「待っててくれると思ったんです……藤堂さんなら、きっと待っててくれるって……」

ほろ苦い結末ではあるけど、なんだか爽やかな後味も残る好編で、捜査課の立派な刑事に成長した京子の未来像が、目に浮かんで来ます。

そんな彼女と出逢って即座にぶつかっちゃうゴリさん(竜 雷太)や、見境なく惚れちゃうボン等w、各キャラクターの持ち味も存分に活かされ、裕次郎さんのコミカルな芝居も楽しめる名エピソード。

尚、今回のボスは珍しくMGCハイパトカスタム・殿下専用タイプを使用。バックアップ用という設定なのかも知れません。

京子を演じたビーバーさんは、ニッポン放送の人気深夜ラジオ番組『ザ・パンチ・パンチ・パンチ』の初代パーソナリティーだった三人組「モコ・ビーバー・オリーブ」のメンバー。(モコ=高橋基子、ビーバー=川口まさみ、オリーブ=シリア・ポール)

三人でリリースした『わすれたいのに』『幸せすぎたの』『海の底でうたう唄』等の洋楽カヴァー曲もヒットし、その人気を買われての抜擢と思われますが、ビーバーさん単体のデータはWikipediaにも記載されておらず、芸能活動は短かったみたいです。

堂々とした演技で、コミカルなシーンもそつなくこなし、舌っ足らずな口調は良い味になってたし、女優としての出演作が他に見当たらないのは意外で、勿体なく思います。
 
コメント (1)
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