一組のカップルが消滅した翌週に、また新たなカップルが『太陽にほえろ!』に誕生します。
長さん(下川辰平)の愛娘=良子(井岡文世)に、気象予報士の市村(柴 俊夫)という恋人が「にわか」に出現、大いに気を揉む父親・野崎太郎の姿が描かれます。
後年の『西部警察 PART III』で柴俊夫さんと共演したマイコン(笑)=石原良純さんが、気象予報士の資格を取得するキッカケにもなったエピソード……とは違うと思います。
また、容疑者役に蟹江敬三さん、港北署の刑事役に小野武彦さん、そして野崎ファミリーも勢揃いと、ゲストの顔ぶれがやけに豪華。
小野さんは『大都会/闘いの日々』の撮影を終えたばかりで、七曲署・藤堂一家と城西署・黒岩軍団の合同捜査という妄想を、ちょっとだけ具現化してくれたエピソードとも言えます。
☆第201話『にわか雨』(1976.5.26.OA/脚本=田波靖男&柏原敏之&小川 英/監督=澤田幸弘)
三年前、港北署管内で借金のもつれからバーのママを殺害したとされる、指名手配犯の迫田(蟹江さん)が七曲署管内で逮捕されます。
が、迫田の人柄に接した長さんは、彼が殺人を犯すような人間だとは思えない。殺害現場の状況も迫田の自供とは食い違っており、彼は傷害を犯しただけで、ママの生命を奪ったのは別人の可能性がある。
決め手は、ママの死亡推定時刻には千葉の浦安市にいたという、迫田のアリバイ。その時、にわか雨が降ったという迫田の自供が本当なら、無実を証明出来るかも知れない!
さっさと迫田を送検して捜査を終わらせようとする港北署を横目に、持ち前の粘り腰で三年前の天気を調べる長さん。
で、その協力を要請しに出向いた気象庁の職員が、娘=良子と交際中の市村だったから驚いた!
気象庁の記録には、三年前の事件当日は「晴れ」としか記されておらず、その精密さを信じる市村と、迫田の無実を信じる長さんは対立します。
対立しながらも、恋人の父親が相手とあっては市村も無視するワケに行かず、浦安地域の委託観測員を紹介するなどして捜査に協力。
結果、気象庁の記録には残ってなかった局地的「にわか雨」を見事に証明し、迫田を冤罪から救った長さんは、敵視してた市村のことも見直すようになるのでした。もちろん、真犯人も港北署の刑事たちに逮捕されます。
刑事コロンボにも負けない長さんの勘と粘りの捜査、そして娘の恋愛に心乱される父親としての姿を、にわか雨というキーワードで繋ぎ、一人の不器用な男を冤罪から救うクライマックスで涙をも誘う、実によく出来たエピソードです。
また、素朴でいつも穏やかながら、気象予報の仕事にはプライドを持つ市村という青年を、柴俊夫さんが実に魅力的に演じておられます。
その市村とどう接すれば良いやら分からない、長さんの戸惑いもコミカルに描かれて、一粒で二度も三度も美味しい見どころ満載のエピソード。
これより柴さんも『太陽』ファミリー(セミレギュラーキャスト)に加わり、良子との結婚に至るまでのドラマが描かれる事になります。
前回の『すべてを賭けて』みたいに切ないロマンスもあれば、若手刑事の青春ドラマやハードアクション、山さんの本格ミステリー、ボスのハードボイルド、そして長さんのホームドラマと、「ドラマの総合デパート」とも言える幅の広さが『太陽にほえろ!』の魅力であり、何百回と続いても視聴者を飽きさせない秘訣なんだろうと思います。
初登場から4年、良子役の井岡文世さんもすっかりオトナの女性になられました。その成長過程がつぶさに見られるのも、長寿番組の醍醐味です。