ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『刑事の現場』2008

2019-06-09 12:00:36 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2008年3月、NHK「土曜ドラマ」枠で全4話が放映された、NHK名古屋放送局の制作による刑事ドラマ。

当時、団塊世代の警察官たちが大量に定年を迎え、若手中心となりつつある警察組織の能力低下が問題視され、その報道取材を基にドラマが制作されたという、異色の経緯で生まれた作品です。

愛知県警・東和警察署刑事課捜査一係の伊勢崎係長に寺尾 聰、新米の加藤刑事に森山未來、主任の岸田刑事に浜田 学、加藤と同期の古川刑事に忍成修吾、捜査二係の野下係長に石倉三郎、バツイチ「マミー」の瀬戸山刑事に池脇千鶴、鑑識係の守本主任に宇崎竜童、木島鑑識員に三浦アキフミ、交番勤務の大島巡査に苅谷俊介、そして桐島副署長に真野響子、といったレギュラーキャスト陣。

初めて観た時、刑事を演じる森山未來くんや池脇千鶴さんらのあまりに若い……いや、幼いルックスにまず驚きました。

いくら何でもこれじゃ刑事に見えない、もうちょっとそれらしく見える若手俳優をキャスティング出来なかったの? 人気優先で選んでるんじゃない?って、当時は初っぱなから引っ掛かって観る気になれませんでした。

だけど今にして思えば、若手刑事たちの頼りなさをビジュアルで表現する為に、あえて童顔の役者さんを選んでるんですよね、たぶん。

本作は団塊世代から若手への伝承がメインテーマであり、たまたまその舞台が警察になっただけの話。だから「刑事物」っていう限定されたジャンルと見なされない為にも、あえてそれらしい役者は選ばなかった……のかも知れません。

だけどその分、去り行く団塊世代には昭和の刑事ドラマを代表する感じで寺尾聰さんが選ばれ、かつて『西部警察』で同僚だった苅谷俊介さんと意味なく絡んだりするんですよねw 舘ひろしさんに『新宿鮫』を演らせたり『クロスロード』で神田正輝さんと組ませたり等、NHKさんには意外と好き者が多いみたいですw

もちろん、綿密な取材に基づいて創られた世界観はリアルだし、現代社会の問題を巧みに取り入れたストーリー(脚本は『太陽にほえろ!』でデビューされた尾西兼一さん)には説得力があり、その高いクオリティーは「さすがNHK!」と言わせるものがあります。

だけど考えてみれば、ベテランが若手に仕事のスキルやスピリットを伝えていくのって、それこそ過去「刑事物」のジャンルでさんざんやって来た事なんですよね。だから当時ホットな問題を取り上げた作品にも関わらず、印象はごくオーソドックスな刑事ドラマにしか見えなくて、そのへんは創り手たちの誤算だったかも知れません。

その反省を踏まえてか、翌'09年に放映される続編『リミット/刑事の現場2』ではガラリと趣を変え、心に闇を抱えた投げやりベテラン刑事(武田鉄矢)とサイコな連続殺人鬼(井浦 新)との狭間で翻弄され、常軌を逸していく森山未來くんの狂気が描かれ、刑事物というジャンルには収まらない力作になってました。

そのあまりに強いインパクトの続編(脚本はあの遊川和彦氏!)の陰に隠れて、目立たない存在と思われがちな『刑事の現場』第1シリーズだけど、ちゃんと観れば確実に楽しませてくれるクオリティーだし、各エピソードで描かれた現代社会の問題には考えさせられるものがあります。

特に原田芳雄さんゲストの第2話で描かれた、警察組織があまりに軽視しがちな「被害者遺族の心情」は、誰もが当事者になり得る問題だけにスルー出来ない重さがあり、第2シリーズではそれがメインテーマになってます。

池脇千鶴さんが子持ちの女刑事を演じる意外性も見逃せないし、『太陽にほえろ!』マニアとしては中堅に成長した「ダンク刑事」の姿にも感慨深いものが(ほんの少しだけどw)あるし、もちろん刑事を演じる寺尾聰さんには不変の格好良さがあるし、これはやっぱりスルー出来ない作品です。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『交渉人/THE NEGOTIATOR』シリーズ '08~'09

2019-06-09 00:00:15 | 刑事ドラマ HISTORY









 
第1シリーズは2008年の冬シーズンに全8話、第2シリーズは2009年の秋シーズンに全9話が、共にテレビ朝日系列の木曜夜9時「木曜ドラマ」枠で放映されました。

さらにスペシャルドラマ2本、劇場版1本が公開され、ゲームソフトまで発売される人気シリーズとなりました。

警視庁捜査一課特殊犯捜査係=「SIT」に配属された初の女性ネゴシエーター・宇佐木玲子(米倉涼子)が、同僚たちから性差別や妬みの的にされ、孤立しつつも信念を曲げず奮闘し、やがて信頼を勝ち取っていくストーリー。

玲子を目の敵にするSIT指揮官に陣内孝則、玲子を目の敵にする係長に筧 利夫、玲子を目の敵にするセクハラ班長に笹野高史、玲子を目の敵にする無線係に鈴木浩介、玲子を目の敵にする管理官に高橋克実、玲子を目の敵にする警部補に高知東生、玲子を目の敵にする警視正に大杉 漣、といったレギュラーキャスト陣。多少の個人差はあれど、警察関係者は全員一人残らず玲子を嫌ってますw

宇佐木玲子は決して、米倉さんが後に演じる『ドクターX』の大門未知子みたいな傲慢キャラではなく、真面目で謙虚な人なのに寄ってたかってそんなに嫌わんでも!って思うんだけど、どうやら組織のイメージアップ目的で彼女をSITに抜擢した、警察上層部への反発心や妬みの感情が根底にあるようです。(それにしたって極端だ)

ほか、玲子の相棒となる若手ネゴシエーターに高岡蒼祐、玲子の唯一の理解者とも言える「レクター博士」的な死刑囚に城田 優、玲子にやたら興味を示す新聞記者に伊武雅刀、玲子の義妹に林 丹丹、玲子の数少ない友人に安めぐみ、さらに第2シリーズから浅野ゆう子、塚地武雅、鈴木悠介etc…といったキャストも加わります。

いつも書いてるように、刑事ドラマで組織内のゴタゴタが描かれるのを私はあまり好まないんだけど、本作の場合はそれを乗り越えていく主人公の成長が言わばメインテーマだし、それまで『黒革の手帳』等で無敵の悪女を演じてきた米倉さんがイジメられる「逆転の構図」が見所にもなってるので、そこを否定しちゃったらどうにもなりません。

まぁ、どんなにイジメられても米倉さんがメゲるようには全然見えませんからw、良くも悪くも安心して観てられます。シリアスタッチにも関わらず陰湿な感じがしないんですよね。それはイジメる側を演じるのが陣内さんだったり筧さんだったり高橋さんだったりと、ネアカな俳優さんばかりなのも無関係じゃないでしょう。

しかしそれにしたって極端で、仕事帰りにスーパーに寄れば他の客から「(会計が)トロい」と罵られ、家に帰れば義妹から邪魔者扱いされと、演じるのが米倉さんでなければ悲壮すぎて観てられないと思います。それを黙って堪え続ける米倉涼子の珍しい姿こそを楽しむドラマなんですよね。

加えて米倉さんの武器であるセクシー・ダイナマイトボディ、そして日本ではそれまで詳細には描かれて来なかったネゴシエーションのテクニック等、見所は多いです。

ともかく女性1人をええ歳こいたオッサンどもが寄ってたかってイビるという構図は、かえって米倉さんの強さを際立たせ、いよいよ本格的に「女性の時代」が始まったことを実感させられます。この手応えが後の大ヒット番組『ドクターX』へと進化して行くんでしょう。

だけど私は、超がつく天才で絶対的な味方もいるドクター大門より、孤立無援のなか努力と根性だけで踏ん張るネゴシエーター宇佐木玲子の方がずっと魅力的だと思います。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする